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次の授業は選択教科だ。美術か音楽か好きな物を選べる。

「やった音楽だっ!」
「あー音楽かぁ…」
嬉しそうな後藤とは裏腹に俺はため息混じりにその教科の名を口にする。

「いちいち各教科ごとにリアクション取らねェと授業受けらんねぇのか?うっとーしい」
俺とは後藤を間に挟んで、1番左手に立つ長谷川がずばりひどいことを言う。まぁもちろんこいつも同じ音楽選択者。
絵を描くのなんか苦手に決まってるから美術を避けたってだけで、俺は決して歌がうまいとか楽譜が読めるとかそんなんじゃない。
歌に関してはほら、中の下くらい。…だと信じてる。

「清水歌ヘタだもんなぁー」
「うるせぇよ」
「だいたい清水が聞く音楽が偏ってんのが問題だろ。Jポップを聞けJポップを。」

笑顔で俺の触れて欲しくない部分を袋だたきにする後藤と、冷静に俺が歌ヘタな理由について考える長谷川。
どっちもどっちでムカつくわけだけども、残念ながらこいつら両方歌が上手い。生まれながらに持ち合わせた長谷川の低音ボイスがリズムに乗ればそれはそれは綺麗に響くわけだ。
が、神様は無情というか何と言うか、このアホ面の後藤の歌唱力は尋常じゃない。
女子なら頬を染めてうっとり目を細め、男子なら驚きの表情を作ったあと歌って欲しい曲をリクエストする。嫉妬だのなんだの言えなくなるのだ。

まぁ、俺は生まれながらに普通だし、別にショックなんか受けないけど。

「あ」

後藤が上げた声に俺と長谷川の足が止まる。
俺達の視界をかすめる縦に詰まれたノートたち。ふわりと持ち主の髪が揺れた。



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