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世界が変わったなんて大袈裟なことを言うつもりはないけれど。
ただのいち生徒でしかなかった俺の生活が変わってしまったのは確かで、変えられてしまったのが事実で。

「……」
俺はどうすればいいんだろう。…俺はどうしたいんだろう。

「清水、ちゃんと聞いてないだろお前っ!」
「…え」
「え、じゃねぇよ立ってろ!」
「えぇっ!?」
どうやら英語の時間だったらしい。…気づかなかったよ、梶原。
「立て」
「…」
立たない俺。
「立てっつっんだろ」
「…はい」
諦めて立ち上がった。
「ぶ…くくく」
後ろで後藤の馬鹿野郎が笑っているのがわかる。立ち上がり、少しだけ視界が高くなるだけで教室というのは全然違うように見える。
(梶原め…)
後藤だけじゃなく他のやつにまで笑われているような気がする。そりゃまぁ気のせいなわけだけども。…気のせいじゃなけりゃ悲しいです、俺は。

コンコン、と扉をノックする軽い音が響いた。
「梶原先生」
「あぁはい」
がらりと扉が開く。昔からの友人らしい二人が他人行儀な挨拶をした。

(…!!)
「あの――…」
くるりと視線を巡らせた彼の目に俺が捕らえられる。
「…くす」
「ッ」
(笑いやがった…!)
カチン、と怒りが鳴る。
(あーどうせ俺は立たされてますよ!どうせ不真面目ですよばーか!)

こしょこしょと俺たちには聞こえない音量で何かを話す。
「あぁ、そうかもな」
「だろ?」
くすくすと同時に肩を揺らす。長い付き合いだろうから、彼らは笑うタイミングがあっているのかもしれない。
「……」
(けっ)
あんなにも、正しい笑顔を、俺には見せない。

俺を好きだと言うくせに、彼は俺には優しくない。
…俺を好きだと言うくせに。



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