桜場の腕は俺の背中のほうにむかい、てのひらは後頭部にそえられた。「なに…」状況がつかめず、なにか言おうとしたが出来なくなった。スローモーションのようにゆっくりと、桜場は俺に顔を近づけてきたからだ。首を右に傾けて。口は少し開いたまま。そして唇と唇が触れ合った。わけがわからない俺はなにも出来ず桜場のめがねが俺の鼻にあたって、カシャン、と音がしたときやっと、キスをされたことに気づいた。