季節は春。夜は冷える。
(うわ、さみぃ…)
「っくは…」
ベッドにはいっても眠れないのにあくびは出た。
(…ついでにトイレしてくか。)
角を曲がろうとした時、誰かと思い切りぶつかった。
「っうわ!?」
俺よりも体の大きかったその男は、倒れそうになった俺を右腕で支えた。
「あ、ありが…」
「大丈夫か?…スマン」
低い声だった。
歯切れも悪く、下を向いて話すからますます聞き取りづらかった。
「あ、いえー…」
暗闇に目がなれた俺の声がとぎれた。
(ー!!)
そこにいたのは
桜場光一だった。
「桜場っ…!?」