見えない引力
[07]
7/14
「今から球技大会の種目決めるぞ」


 担任のその一言で眠くて降りていたまぶたが上がった。


「この学校、球技大会もすんだな」

「まあな。内容は公立と変わらないと思うぞ?」

「変わった競技あった方が怖いわ」


 あれ? 変わった競技って何がある? クリケットって球技だっけ。まあ、金持ち学校だからって庶民が思いつかないようなものしないだろ。


「お前、何にする」


 種目はサッカーとかバスケとか普通の種目。


「お、意外とまとも」

「この学校のことどう思ってんだよ」

「偏見の塊でいいなら答えるぞ」

「やめとけ。ハブられるのが落ちだ」

「冗談だっての。偏見あったのは認めるけど」


 そう。偏見があったのは確かだ。


「金持ちでも、まともな奴ばっかだよ」

「うん。友達に会えないのは寂しいけど、君島や恵理ちゃんが居るから大丈夫だと思う」

「俺が先なんだ?」

「まあ、同じクラスだし、ね」


 種目、何にしよっかな。


「部活やってる奴は別の競技にしろよ。そうしねぇと、ばらつきが出る。つか、そういう決まりだ」

「そういえば五十嵐。部活やってた? 入る予定とか。ここ、幽霊部員でも入っとかなきゃいけないから」


 体育委員がいきなり訊いてきた。そして爆弾を投下した。


「部活はやってなかった。まだ部活見学してないから決めてない」

「先に部活してる奴から埋めるけど良いか?」


 このクラス、ほんと仲良いよな。初日のカラオケとか。金持ちがカラオケ行くことにはびっくりしたけど。


「俺余りで良いわ」

「了解」

「決まったら起こしてくれ」

「いや起きとけよ」

「え、いや……ごめんなさい、起きときます」


 君島に睨まれた。怖かったです。最近君島って俺の扱い酷い気がするんだけど。気の所為? 気の所為じゃないよね?


「でもほんと、何でも良いんだけど。君島は?」

「俺も何でも良いや」

「一緒じゃねーかよー」


 脱力して黒板を見る。サッカーにバスケ、テニスにバレーにドッジか……。そいやドッジってシに濁点かチに濁点か分からなかったんだよな。まぎらわしいし。チームに分かれていくのを見て思う。金持ち学校でも同じなとこは同じなんだなって。


「五十嵐ー!」

「んー?」


 気のない返事をして体育委員を見る。


「あと君島」

「何?」

「お前らバスケになったから」

「バスケ?」

「うん」


 チームプレー大切じゃん。ぽっと出の俺ちゃんと出来んのかな。


「だぁーいじょーぶだって! 君島居るし」

「いやそこ心配してねーよ!?」


 言うとどっと笑われる。


「お前、もうクラスの一員だって!」


 俺の杞憂だったみたいだ。あ、君島の野郎、笑ってやがる。
 

◇◆◇◆◇


 今日はバイトがは休みだ。恵理ちゃんと帰れるから教室の前で待っていると、A組から金髪くんが出てきた。


「……」

「……」


 やべぇ!! 目ぇ合っちゃったよええ!? こっわ! こういう時ってどうすりゃ良いだっけ!?


「……」

「……あの?」


 気まずい! とても気まずい! 相手不審がってしなるべく関わりたくないって!!


「お前が五十嵐?」

「へ?」

「あーいや。昨日奨が言ってたから」

「奨が?」


 金髪くんが奨の名前を出したから怖くないと自分に言い聞かせた。きっと見た目だけだ。うん、そうに決まってる。


「あんたは?」


 なんで君は? とか、あなたは? とかじゃないんだよ俺!!
 平静を装って内心びくびくしながら金髪くんを見上げた。


「俺? 俺は塚本健人。よろしくな」

「え……あ! 俺は五十嵐涼太」

「知ってるよ」

「よ、よろしく」


 良い奴……なんだろうがこわい。


「涼太?」

「うおう!?」

「ん?」

「恵理ちゃん……」

「桐谷、お前種目何?」


 唐突な質問だな。


「バレーボール」


 しかも通じてる!?


「そっか。俺と奨はバスケだから」

「言っとく」

「五十嵐は?」

「俺もバスケ」

「順調に進めば当たるな」

「あ、ああ」


 見た目あれだけど意外と普通……だな。


「じゃ、約束あんだわ。またな、桐谷、五十嵐」

「またね」

「ああ、またな」


 話すと普通でも見た目不良な奴と知り合いました。



戻る
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -