見えない引力
[07]
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「今から球技大会の種目決めるぞ」
担任のその一言で眠くて降りていたまぶたが上がった。
「この学校、球技大会もすんだな」
「まあな。内容は公立と変わらないと思うぞ?」
「変わった競技あった方が怖いわ」
あれ? 変わった競技って何がある? クリケットって球技だっけ。まあ、金持ち学校だからって庶民が思いつかないようなものしないだろ。
「お前、何にする」
種目はサッカーとかバスケとか普通の種目。
「お、意外とまとも」
「この学校のことどう思ってんだよ」
「偏見の塊でいいなら答えるぞ」
「やめとけ。ハブられるのが落ちだ」
「冗談だっての。偏見あったのは認めるけど」
そう。偏見があったのは確かだ。
「金持ちでも、まともな奴ばっかだよ」
「うん。友達に会えないのは寂しいけど、君島や恵理ちゃんが居るから大丈夫だと思う」
「俺が先なんだ?」
「まあ、同じクラスだし、ね」
種目、何にしよっかな。
「部活やってる奴は別の競技にしろよ。そうしねぇと、ばらつきが出る。つか、そういう決まりだ」
「そういえば五十嵐。部活やってた? 入る予定とか。ここ、幽霊部員でも入っとかなきゃいけないから」
体育委員がいきなり訊いてきた。そして爆弾を投下した。
「部活はやってなかった。まだ部活見学してないから決めてない」
「先に部活してる奴から埋めるけど良いか?」
このクラス、ほんと仲良いよな。初日のカラオケとか。金持ちがカラオケ行くことにはびっくりしたけど。
「俺余りで良いわ」
「了解」
「決まったら起こしてくれ」
「いや起きとけよ」
「え、いや……ごめんなさい、起きときます」
君島に睨まれた。怖かったです。最近君島って俺の扱い酷い気がするんだけど。気の所為? 気の所為じゃないよね?
「でもほんと、何でも良いんだけど。君島は?」
「俺も何でも良いや」
「一緒じゃねーかよー」
脱力して黒板を見る。サッカーにバスケ、テニスにバレーにドッジか……。そいやドッジってシに濁点かチに濁点か分からなかったんだよな。まぎらわしいし。チームに分かれていくのを見て思う。金持ち学校でも同じなとこは同じなんだなって。
「五十嵐ー!」
「んー?」
気のない返事をして体育委員を見る。
「あと君島」
「何?」
「お前らバスケになったから」
「バスケ?」
「うん」
チームプレー大切じゃん。ぽっと出の俺ちゃんと出来んのかな。
「だぁーいじょーぶだって! 君島居るし」
「いやそこ心配してねーよ!?」
言うとどっと笑われる。
「お前、もうクラスの一員だって!」
俺の杞憂だったみたいだ。あ、君島の野郎、笑ってやがる。
◇◆◇◆◇
今日はバイトがは休みだ。恵理ちゃんと帰れるから教室の前で待っていると、A組から金髪くんが出てきた。
「……」
「……」
やべぇ!! 目ぇ合っちゃったよええ!? こっわ! こういう時ってどうすりゃ良いだっけ!?
「……」
「……あの?」
気まずい! とても気まずい! 相手不審がってしなるべく関わりたくないって!!
「お前が五十嵐?」
「へ?」
「あーいや。昨日奨が言ってたから」
「奨が?」
金髪くんが奨の名前を出したから怖くないと自分に言い聞かせた。きっと見た目だけだ。うん、そうに決まってる。
「あんたは?」
なんで君は? とか、あなたは? とかじゃないんだよ俺!!
平静を装って内心びくびくしながら金髪くんを見上げた。
「俺? 俺は塚本健人。よろしくな」
「え……あ! 俺は五十嵐涼太」
「知ってるよ」
「よ、よろしく」
良い奴……なんだろうがこわい。
「涼太?」
「うおう!?」
「ん?」
「恵理ちゃん……」
「桐谷、お前種目何?」
唐突な質問だな。
「バレーボール」
しかも通じてる!?
「そっか。俺と奨はバスケだから」
「言っとく」
「五十嵐は?」
「俺もバスケ」
「順調に進めば当たるな」
「あ、ああ」
見た目あれだけど意外と普通……だな。
「じゃ、約束あんだわ。またな、桐谷、五十嵐」
「またね」
「ああ、またな」
話すと普通でも見た目不良な奴と知り合いました。