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▼ 解釈違いです!!

「ありがとうございました!」

毎朝、出勤の前に行くコンビニ。
そこではいつもさわやかな笑顔で接客する店員さんがいる。

こちらこそ日々の潤いをありがとうございます。
毎日毎日、死にもの狂いで働いているせいか、人に優しくされるとかなり染みる。
それがたとえ接客の一種であっても、だ。

会社につき、爽やか笑顔君(勝手に呼んでいる)から受け取ったビニール袋の中身を取り出しながら、私はため息をつく。
私って案外ホストとかにハマりやすいのかもなぁ。

「うわぁミョウジさん、またコンビニですか?体壊しちゃいますよ。」
「またコンビニですよ。最近のコンビニは栄養バランスもいいし、問題なし。」
「そういう問題ですか?まぁこんだけ忙しかったらそうなりますよね。」

山積みの書類を見て、今度は部下と二人でため息をつく。
ご飯を食べながらキーボードを打ち込み、目線は書類を確認する。
こんなのはまだカワイイ方だ。

仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事…こんな日常、コンビニ店員に癒させるくらい許して欲しい。
あのカワイイ笑顔、あの華奢な体。きっと危険とは無縁で、かわいいワンちゃんとかと過ごす、優しい世界を生きているに違いない。
ああ…自分が住みたい世界を他人に投影して現実逃避をしたところで、この書類の山は消えない。

今日も、あのコンビニの笑顔を守る為、お仕事をがんばりますか。
そう、思っていたのだが。

怪盗クイーンが日本で悪事を働く。
そんな犯行声明が届き、現場で待機していたのが2時間前。
そして今、爆風が起き、白いコートの男が、刀を振り回しているのが今。
ちょっとまって、巻き込まれたら死ぬ!!!

「公安警察だ!とまれ!!!」
内ポケットに隠していた拳銃を抜き、その男に構えるも、クイーンもコートの男も泊まる事をせず、戦いを続ける。挙句の果てには、クイーンが頭上のワイヤーにつかまり、空を飛び逃げようとする。発砲しようとすると、「邪魔すんじゃねぇ!」とコートの男が叫ぶもんだから、私は致し方ないと指に力を入れた。
邪魔するなら、彼も敵だ!!

「ちょっと待って待って!」
すると突然腕を掴まれ、とっさに自己防衛の為、腕を払い、視界をコートの男からそらさないまま、掴んで来た人物の頭部に蹴りを入れ地面にたたきつける。

「いってぇ!!!」
叫んだ聞き覚えのある声に、振り向けば、あのコンビニの王子様。
「え!?なんでこんなところに!?」
「…ICPO(国際刑事警察機構) です。あなたが撃とうとしてたあの人相の悪い人も…。」
痛みに悶えながら見せられたICPOの手帳に、血の気が引く。
「すすすすすすみません!」
地面に寝ころんだまま、王子様は「いやいや、旦那人相悪いですからね。」と笑った。
手を差し伸べると、すみませんと彼は私の手を掴む。

そうこうしているうちにクイーンは逃亡。あああなんてことだ。

そんな事があったのが三日前。そして今、コンビニのレジにはICPO兼コンビニ王子様が、ニコニコと私にお釣りを渡す。
「…ICPOって副業いいんですか?」
「まーまー。硬いこと言わずに。いやぁまさかお姉さんが“こっち側”の人だったなんて。」
私の質問をはぐらかす彼にため息をはく。なんだかどんどんイメージが崩れていくぞ。

「ね、お姉さん。よかったら今度はさ、平和な喫茶店とかでお話しようよ。」
「…結構です。」
「あーあー。蹴られた頸が痛いなぁ!!」
「ぐ…脅す気ですか…」
「まあまあ。…ずっと、危険に巻き込んだらダメだって、声をかけるのを諦めてたんだから。同じ世界の住人なら、遠慮はいらないっすよね。」

いつものカワイイ笑顔ではなく、にやりと笑った彼の言葉に、ぐっと言葉に詰まる。
なにが危険とは無縁で、かわいいワンちゃんとかと過ごす、優しい世界だ。この男…!
解釈違いだ!!私のコンビニの王子様を返せ!!!

守るとおもった男にそのうち守られるようになるのは、まだ先のお話。

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