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▼ 君の言葉で愛を聞かせて

同級生の男の子に映画に誘われた。
好きな男子ってわけじゃないけど、やっぱり緊張してしまう。

前日は着る服をなんども何度も考えた。
明日はきっと。ドキドキした一日を過ごすんだろう。
そう思ってた。

のに…。

「あ!ミョウジさん!こっちこっち!」
笑顔で手を振る男の子。内人君。
彼はとってもいい笑顔。デートを楽しみにしてくれてたのかと、嬉しくなる。

が。

「内人…君。なんでその…ティッシュをいっぱい貰ってるの?」
内人君のポケットからは、駅で女の人が配ってたポケットが入ってる。しかも大量に。

「え?ああ。さっき配っててね。無料だし、役に立つから。」
そう言ってニッコリ笑顔の内人君。
爽やかな笑顔な彼の前で、あたしの笑顔はひきつっていなかっただろうか。


しばらく歩くと映画館が見えてきた。

「あ、ジュース!なにか買う?」
「ううん。大丈夫。」
「そっか。じゃあ行こう!」
妙に緊張した顔で内人君が映画館の席に向かう。

「…」
少し驚いたけど、内人君、少しは…あたしとデートって意識してくれてるのかな…。
なんだか恥ずかしいけど。嬉しかった。


今流行の映画は、CM通りに面白かった。
もう帰るのかな。そう思ったら、内人君に喫茶店に誘われる。
映画の感想を話そう。だそうだ。
映画から喫茶店。この自然な流れ。
まるでデートに慣れてる人のよう。

…そっか。内人君。慣れてるんだ…。
そういうデートを望んでたはずなのに。全然嬉しくなかった。

別に…あたしがデート初めてで
昨日からずっと緊張してるからって。
あたしは内人君の事好きでもないのに。
内人君がデートなれしてるのに
なんだか悲しくなる理由なんてない。

なんだか沈んだ気持ちのまま
喫茶店をでると、内人君があたしの左側からすっと移動して右側に来た。

「?」
「車道。あぶないから。」
そう言って照れたようにわらって頭を掻く。

「…っ。」
ぐるん。と急いで内人君から視線をそらした。
理由は自分でも解らなかった。

少しだけウインドウショッピングをして、夕方になると内人君が家まで送ってくれた。
あたしが「今日はありがとう。おやすみ。」と言ってドアを閉める直前。
内人君が「あ…のっ!」と声を漏らした。

「どうしたの?」
不思議そうに尋ねると、内人君は何度か「あー。」とか「うー。」とか唸ると。いきなりしゃがみこんだ。
「内人君大丈夫???」

心配して駆け寄って目線を合わせると、内人くんは顔を上げずにあたしの腕を優しくつかんだ。
突然の体温に驚くが、内人君は離さずに手の力を優しく強めた。
「…ごめん。本当は、ドアが閉まる直前に、創也から教えてもらった言葉を言おうとしたんだけど…勇気でなくて…。」
しゅんとしたように言う内人君。

竜王君?なんでここで竜王君?
あ…。もしか…して。


「あ、の。もしかして今日のデートコース…竜王君に計画立ててもらった?」
あたしの質問に内人君はビックリしたように顔をあげて、「なんでわかったの?」といった後。観念したように顔を伏せて答えた。

「僕…デート、とかした事なくて…でも…ミョウジさんに楽しんでもらいたくて…。でも全然駄目で…。」
そう言った内人君に、あたしはなんとも言えない感情が体を駆け巡った。

「あたし、は。素直に笑う内人君とか…デートに誘ったときの緊張した内人君の方が…完璧なデートする内人君より…全然好きだよ。」
「え…え!!?す、好き!?」

驚く内人君を見て、あたしはほほ笑む。自分でも驚くくらい、その気持ちはすんなりとあたしに入ってきた。
そうだよ。あたしはもうずっとずっと、前から。
自分でもきづかなかったけど。内人くんが好きだったんだ。

「だから…内人君の言葉で聞かせて?」


にっこりと笑ったあたしに。
内人君は真っ赤になった後。今日一番の笑顔をして。あたしに言った。


「君が大好きです。」


飾らないあなたの言葉で。あたしに愛をささやいて。

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