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▼ 蝶よ、花よ。4


あの人と姉がそういう関係だって事はわかっていた。
だって姉さんが向ける笑顔、私とあの人で全然違うんだもの。
声が、視線が、表情が、好きだと言っていた。
お互いがお互いを求めていた。
ずっと私の姉さんだったのに、あの人の前でだけ姉さんは私の知らない人になる。

取らないで。
私からカナエねぇさんを取らないで。
私には、もうねぇさんしかいないの。

嫌いな人。飄々としてて、つかみどころがない。
いつも私を茶化してきてふざけているクセに、私よりも背が高くてたくさんの鬼の頸を切ることができる。
そんなところも大嫌い。

だけど姉さんが鬼に殺された日、あの雨の日。
この嫌いな人の腕の中で私は強く姉さんの存在を感じた。
嗚呼、姉さん。この人の体温、匂い、抱きしめられた時の強さ。
全て姉さんが感じていたものなのね。

そしてこの人が私を見る視線。
私じゃない人を見てる。この人も、私も、姉さんを強く求めてる。
今この空間には、姉さんが生きていた強い証が存在している。

この人とそういう関係になるのに時間はかからなかった。

私の体を滑る手、うなじに落とされる唇、信じられないくらい熱い自分の体。
姉さん。姉さんもこういう風に、この人に抱かれていたの?
私の知らなかった姉さんをひとつずつ拾っていくような感覚。

ふと閉じていた目を開けると、私を抱くこの人と目が合った。
なんであなたは悲しい顔をしているの。
だってねえ、今、こんなにも気持ちいいのに。
慰めるようにその頭を抱き抱えれば、私の背に周った手に力が入った。
ああ、温かい。その日は、抱き合いながら眠りについた。


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