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▼ 蝶よ、花よ。2

「あら、あらあらあら!」
とある日、カナエとしのぶちゃんの二人に挟まれる様に小さな少女が蝶屋敷にやって来た。

「こんにちは、小さなお嬢さん。」
しゃがんで目を合わせ挨拶をするも、ボサボサに伸びた髪の奥で覗く目は瞬きすらせず、こちらをジッと見つめるだけだった。
「…小さなお嬢さん。よかったら温かいお湯で体を綺麗にしましょう。そのあと髪を整えて、その素敵なお顔を見せてちょうだい。」
カナエにウィンクをして合図をすれば、カナエは優しく微笑んで頷いた。
「さぁ行きましょ。ここのおうちのお風呂はすっごく素敵なのよ。」
「もう!あなたいつまでここに居座るつもりですか!」
さも自分の事のように話す私に、しのぶちゃんがすかさず眉を吊り上げ声を張り上げた。
ぷりぷりしたしのぶちゃんに手を振り、小さなかわいいお嬢さん…カナヲちゃんをさらに可愛くする為、私達は浴室に向かった。


「カナヲー!カナヲちゃーん!どこかしらー?」
カナヲちゃんが来てから一週間が経った。
あの日から、カナヲちゃんは私のお気に入りだ。
「髪の毛結いましょーカナヲちゃーん。結わせてちょうだいよー。」
キョロキョロと探すもその姿は見えない。

「ねぇカナエ。カナヲちゃんはどこに行ったのかしら。」
「しのぶと稽古をしているわ。まったく…ナマエってば毎日カナヲを追いかけ回して。あんまりカナヲを怖がらせないであげて。」
薬品を並べていたカナエに問えば、彼女は困った様に笑う。

「あら、困らせてないわよ。あの子の髪を綺麗に結いあげて、あの可愛い顔をもっと輝かせたいだけよ。」
「もう、ほどほどになさいね。」
カナエがため息をついたさい、その黒い髪が揺れ、真っ白なうなじがチラリと覗く。

「…ねぇカナエ。いまって私達だけなのよね。」
「そうよ。二人だけなのにナマエのせいでちっとも静かにならない。」
ゆっくりとカナエの背後に近づき、そして

チュッ

そのうなじに、口付けをする。

「ねぇカナエ、もう一度聞くわ。いまって、私達だけなのよね。」

もう!いま忙しいから離れて。
そういつものように押しのけられるかと思いきや。

「二人っきりよ。…あなたと、私だけ。」

くるりと振り返ったカナエが、わたしの口にその形のいい唇を重ねる。

あら、あらあらあら。
珍しい。いつもは任務終わりの早朝しか相手にしてくれないのに。
「嬉しいけれど、どういう風の吹き回しかしら。」
何度も角度を変え、その口付けに応える。
「…最近のあなた、カナヲばかりで私少し寂しかったのよ。」
恥ずかしそうに笑うカナエの姿を見て、私の胸がきゅんと高鳴る。

ああもう…本当にこの子は

「なんて可愛らしいのかしら」
私たちは襖を閉めて雪崩れるように重なって倒れ込んだ。



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