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▼ コート上の王子様

あれ?
ふとした時に気付いた、彼への違和感。
2年生になり、彼の隣の席になったのは今日が初めてなのだが、一年のころの彼とは違った何かを感じた。

何が違うんだろう?
横目でみながら、探す違和感。
そして、気づく。

あ、逞しく,なったんだ。
ノートに文字を走らせる腕が、一年前よりも太く、しっかりとしている。
視線を上にあげれば、なんだが肩幅もガッチリしている気がした。

そこで彼…縁下くんと目が合い、咄嗟に視線を外す。
「どうかした?」
せんせいにばれないように先生にバレないように
小声で問いかける彼に、私はえっと、と言い訳を探し、「消しゴム忘れちゃって、貸してくれない?」と囁いた。嘘ではない。今日は消しゴムをわすれてしまって、昼休みに購買に買いに行こうと思っていたところだ。

「はは、去年と逆だな。」
そんなセリフに、どきりとした。
去年,私は縁下くんに消しゴムを借した。それが縁下くんと話した最初の言葉だったことは、よく覚えている。
私だけが、覚えていると思ったのに。

ブチリ、と音がして、縁下くんが消しゴムを二つにちぎる。
はい。どうぞ。と口パクをし、その片方を私の机に置いた。

「えっありがとう。ごめんね、ちぎらせちゃって。」
「これも、去年と一緒。あの時はありがとな。」

ふにゃりと笑った彼を見て、逞しくなって彼だが、優しい笑顔は変わっていないことにも気づく。

昼休みになり、私は縁下くんにお礼の飲み物を買い、届けようとした。のだが、彼は見当たらなかった。どこに行ったんだろう。
ふと、そこでそろそろバレー部の試合があることを思い出す。もしかしたら、と、足を体育館に向けた。

キュッと床を鳴らすシューズの音
ボールを打つスパイクの音
少しだけ熱い室内
トスを求める声
チームにかける、言葉たち
縁下くんの大切なものが,そこにはあった。

「お願いします!!」

聞か慣れた声がして、その声の主を探せば、
教室で見せる優しい雰囲気とは違って
大きな声を出し、打たれたボールを拾いに走る縁下くんの姿が。

逞しくなった体
優しいままの笑顔
一心にボールを追いかける姿
全部が全部、こんなにも

「…かっこいい。」

私の呟きは、もう一本!という縁下くんの声にかき消される。

きっと彼はこれからもっともっと、忙しくなるのだろう。このチームで。
「…邪魔なんてできるわけないや。」
だって私は、バレーに一生懸命な彼が好きなのだから。


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