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▼ はじめまして

「ふぅん…こんな顔してるんだ。」
少女…ミョウジナマエは小声で呟いた。
蜃気楼…“ミラージュ”を使うクイーンの顔は、RDのデータ上で何度も見ては忘れてしまっていた。が、今クイーンは蜃気楼を解き、カメラ越しにこちらに指をさしてきた。
…本当にRDを自分に取られたくないのか。

チラリと視線を上げれば、教師はまだ生徒達に背を向け黒板に文字を走らせている。

ナマエも、教科書の影で隠れて開いた自身のノートパソコンに指を走らせた。
「おもしろいじゃん。」

音をたてないようにキーボードを打ち込み、クイーンのいままでの情報を調べる。
クイーンが盗んで来たお宝を調べ、統計する。
次にクイーンが狙うのはなんだ。
警察よりも先に予測し、邪魔をしてやろう。
怪盗クイーンのお手並み拝見だ。
しかしナマエの指はとまる。


解らない。


すべてのものはデータに従っているはず。
しかしクイーンの狙うお宝は変則的で、共通点もない。
RDのデーター上のクイーンは
怪盗の美学がどうだとか言っていた。
ハーフムーンやピラミッドキャップ。
共通しているのは、謎めいているもの…
でも醤油を盗んだりしている…

ここまで考え、ナマエは考える事をやめた。

わからない事はわからない。
ちょうど授業終了の鐘がなり、パソコンを閉じる。

家に帰ってから、RDとのチャットで聞いてみよう。
RDが“うっかり”教えてくれるかもしれない。
でも怪盗クイーンの事だ。何か手をうっているかも。


しかしその心配は杞憂に終わる。


「おかえりミョウジナマエ君。そして、はじめまして。」
家の前に、本人がいたからだ。

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