自由気ままに | ナノ
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -


▼ うちにおいでよ

「私?」


指をさされたクイーンは、パチパチと瞬きをして首を捻る。
『ええ。あなたですクイーン。事の始まりはそう、私がここトルバドゥールに来てから…』

物悲しいBGMがなったと思えば、天井からスクリーンが下りてくる。
写し出されるはクイーンのようなミニキャラと、ジョーカーのようなミニキャラ。
そして慌ただしく動く天井のカメラとRDの手として活用されるアームの絵。

なんだこの茶番は。
突然始まった紙芝居の上映にジョーカーは頭を抱える。


『世界最高の人工知能は毎日毎日、仕事をしない家主の為に一生懸命家事をこなしていました…。』
「ひどい家主がいたもんだ。」
まったく、という様に呟くクイーンにさらにジョーカーは頭を抱える。
『可哀そうな人工知能。そんな人工知能には唯一の楽しみがありました。』
「猫ちゃんのノミとりかな?」
「もうあなたは黙っててください。」
『それは離れて暮らす、唯一の友人とのチャットのやり取り。』
「おかしな事をいうね。君には私やジョーカー君といった友人がいるじゃないか。」
「ぼくは、仕事上のパートナーです。」
『私は一介の人工知能にすぎません』
「…話を続けようかRD」

二人の友人に即座に否定され、クイーンは聞こえないフリをする。
止まったBGMがまた流れ出す。何ともシュールな光景だ。

『そのチャットでは、日々溜まった恨み…いや愚痴…いや悩みを綴りました。』
おい。チャットで悪口を言っているのか。そう思ったクイーンだが、先程の事を思い出し口を挟まずに我慢した。
『そしてその友人は言いました。君にそんな酷い事をする人はどんな人なんだい。と。しかし私は世界最高の人工知能。家主の個人情報なんて明かせません。そんな時その友人からプレゼントが届きました。それがbloom。私はうっかりソレを開けれしまったのです…』


おいまて。悪口を言うだけで飽き足らず、自分の手を汚さず私の情報をリークしたって事か。
クイーンはそう思ったがこの人工知能、最後までウッカリを通す気だなと、質問の為上げかけた手を下した。

「それで…その友人は君を心配しての事なんだろう?そしてRDが持っているクイーンのデータを見て…なんて言っているんだい。」
『ええ、今とちょうど友人からメッセージが届きました…』


スクリーンに写し出された文字に、クイーンだけでなくジョーカーも固まる。


【そんな仕事しない人の所より、RD、もううちにおいでよ】


『…いいかもしれないですね。』

そう呟いたRDに、観念したようにクイーンは立ち上がる。
「仕事をするよ!!」

今も見てるであろうその友人とやらを、カメラ越しで指をさしてクイーンは叫んだ。

prev / next

[ 目次 ]