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▼ 一つ目

文化祭も終わり、三年生は本格的に受験モードになった。
この学生生活もあと少しかぁ。

トルバドゥールに就職(?)すると決めた私。
あまり考えていなかったけど、それはこの町とお別れという事だ。

残り数か月、この町を探検するのも悪くない。
学校が終わり、虹北商店街に足を運ぶ。

虹北商店街は、隣町にある商店街だ。
通っている高校と自宅のちょうど中間にある為、放課後よく寄り道をした。

数店舗まわって買い物をすると、おまけでクジを引かせてもらった。
この商店街はよくイベントをしている。
棒付きの飴玉が3個当たり、お礼を言ってポケットにしまう。
うーん、一等の温泉券欲しかったなぁ。

「おや」

本屋の中に、岩崎さんの姿を見かける。
声をかけようとしたが、大きな荷物を持った長髪の青年と一緒だったので声をかけるのをやめた。
岩崎さんの初めて見る顔で良く解る。大切な人の時間を邪魔してはいけない。
先程貰ったキャンディーを口に放り込み、私は本屋を後にした。




「亜衣、どうかしたか?」
空港からそのまま商店街にむかい、数か月ぶりの亜衣と合流した。が、普段と変わらない雰囲気に俺は内心頭を抱えていた。
いつ手をつなごうか。そう悩んでいる俺を余所に、亜衣は窓の外を見てきょろきょろしている。

「え、あ、いや、高校の先輩が居た気がしたの。気のせいだったみたい。」
俺の緊張なんてまったく感じていない亜衣は、普段通りに笑っていて、意識しているのは俺だけかと、ついため息をついてしまう。
「そうだ、今度その先輩にね、レーチの事紹介するね。海外で頑張っている、私の彼氏ですって。」
そう言って花が咲いたように笑う亜衣に、俺は全部がどうでもよくなった。
「そろそろ行こうか。夢水先生の所に挨拶も行きたい。」
本屋をでて亜衣にそう提案する。亜衣はうんと笑って、俺たちはどちらともなく、自然と手を繋いで歩き出した。



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