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▼ 君はプリンセス

「…ありがとうございます。」
「いえ…。」

お弁当を持ってきた彼…ジョーカーさんは弁当を渡した後、すぐに戻るでもなく立ち尽くす。
「…えっと…。」
なにかお礼をまっているのか…?
ジョーカーさんを見ると、キョロキョロと校舎を珍しそうに見渡していた。

…もしかして?

「ジョーカーさん。お昼はもう食べた?」
「…いえ、RDから、お弁当を渡されました。」
…さすがRD、私の行動なんてお見通しか…。

「ジョーカーさん。一緒にお昼、食べない?」
「…ぜひ。」
相変わらずの無表情。余計なお世話だったかな。


屋上に行こう。そう言うと彼は「僕は入っていいんですか?」と怪訝な顔をした。
「大丈夫大丈夫。」
「そうですか…」

屋上に向かう途中、何人かの先生に「ミョウジ、そちらは?」と聞かれたが、
親戚です。今日急遽3者面談があるんです。
と、堂々と答えればみんな納得したように「そうでしたか」と挨拶をして去っていった。

「やっぱり部外者はダメなんじゃないですか。」
「堂々としてればばれないもんですよ。」

立ち入り禁止の看板を無視して私は屋上の階段を上る。

「立ち入り禁止って書いてありますけど…」
「立ち入ってるのがばれなきゃ大丈夫。」

私はポケットから屋上のカギを取り出した。
「…いいんですか?」
「怪盗に言われたくはないな。」
「…。」





『クイーン。なぜジョーカーに届けさせたんですか?』
「一緒に住むなら、仲がいい方がいいだろう?」

優雅にワインを飲みながら、クイーンは微笑んだ。
「RD、よくありふれた物語の法則を知っているかい?」
『法則?』
「そう。昔話の法則だよ。ある国のお姫様はね、小さい頃、一人の青年に出会うんだ。
たった数時間の出来事。しかしお姫様は、その青年が忘れられない。こういった物語、最後はどうなる?」
『再びめぐり逢い、恋に落ちますね。運命の相手との出会いだった。という物語はよくあります。』
「そう。素敵な法則だよね。」
『?』

突然ラブロマンスを語るクイーンに、RDは困惑するも、クイーンとはそういう人間だったとRDは無理やり納得する。

「ナマエ君は、プリンセスさ。」

クイーンのつぶやきは、RDには聞こえなかった。





「いい天気だね。」
「そうですね。」
「…」
「…」
二人で屋上に座り、並んでお弁当を食べる。
お互い口数が多い方ではないので、静かな食事。
遠くで騒ぐ生徒の声が聞こえる。

空はとても青く、風が気持ちいい。
「…午後、さぼっちゃおうかな。」
「…授業は出たほうがいいんじゃないですか?」
「でも今日は残りの時間は、自習だしなぁ。文化祭前で、自習という名の文化祭準備なんだよ。」
「ブンカサイ?」
「学校のお祭りみたいなもの。」
「ナマエは準備に参加しなくていいんですか?」
「うん。三年生は参加自由だし。部活にも入ってないしね。」
「そうですか。でもせっかくの高校生なのに」

その言葉に、私はなるほど。と納得した。
思い出すのは校舎を珍しそうに見るジョーカーさん。
大人しく屋上までついてきて、弁当を食べるジョーカーさん。

もしかして彼は、学生生活というものに興味があるのかもしれない。
彼が学生だった時代があるのかは謎だが、今日のジョーカーさんの行動を見て、私はそう確信した。

「…ねぇジョーカーさん。一緒に学生になっちゃおうか。」
「え?」

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