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▼ 3年4組

「ミョウジ、なんか弁当すごくないか?」
潔子と教室で向かい合ってお弁当を食べていると、澤村、スガ、東峰が教室に入ってきた。スガは同じクラスだが、東峰はちがうクラス。なのでこの教室で彼の姿を見るのは珍しい。
「澤村、それなんか弁当がでかいみたいに聞こえるからやめて。」
「あ、いやすまん。なんか野菜も肉もバランスがとれてて、教科書に出てきそうな弁当だなって。」
「ありがとう。拘って作ってますから。」
ふふん。と笑えば、菅原が「え!」と澤村の後ろから覗いてくる。
「え、ミョウジ自分で作ってんの?すげー。なんか、かっこいいなそういうの。」
菅原がいうと、なんでこうも全てが爽やかに聞こえるのだろうか。ありがとうと言うと、菅原は俺も自分で今度作ってみよーかなーと席に座る。
隣の澤村の席を囲んで3人で仲良くお弁当を広げ始めたので、今日はここで食べるようだ。珍しいな。
そこでそういえば今日は体育館を授業の関係で昼休みに二年生が使うとかなんとか言ってた気がする。なるほどそれでここで食べるのか。

「たしかにナマエの弁当はすごいよね。毎日おいしそう。」
「ありがとう潔子。そんなかわいい潔子にはこれをあげよう。」
卵焼きを口に持っていけば、なにそれと笑いながら潔子が口を開けてくれる。
「ありがとう、おいしい。」
ごちそうさま。と笑う潔子のあまりの可愛さに、目頭を押さえていると、横の3人も目頭を押さえていた。
うわ、私、側から見たらあんななんだ。やめよ。


その時、ぴろんと私の携帯がなる。
誰からの連絡だろう。視線を向ければ、
「及川…」
携帯の画面に映し出された名前に、体が硬直し、するりと口からあいつの名前が出てしまった。
「え?」
澤村の返答に、はっと我に変える。
「いま、ミョウジ及川って言った?もしかしてだけど、及川徹?」
「え、及川!?」
「スガ、大地、落ち着けって…。」
身を乗り出してくる二人から携帯を隠して、ちがうよと笑えば、二人も我に帰ったようで、ごめんと謝罪して席に座り直す。
「中学の時の同級生からだった。あの有名な及川徹からじゃあないよ。」
 

うそじゃない。


本当に、中学の時の友達からの連絡。及川からじゃない。友人、岩泉からの連絡。
画面には、“及川に彼女ができた。お前、本当にいいのか。"と書かれてあった。
岩泉にはなにもかもお見通しなんだろうな。

しかし、いまさら私になにができるというのだろうか。こんな私が及川のそばに居れるわけがないし、及川だってもう私なんて友人とすら思ってないはずだ。私がそういう態度を取ってきたんだから。それに、もし、私達が両想いだったとしても、行き着く先は地獄。

輝き続けるあいつの横に、私は居られない。
きっと及川に嫉妬をするし、そんな私に及川も愛想を尽かすだろう。
お互いが、お互いの存在に疲れてしまう。

岩泉には、よかったじゃん。とだけ返して、携帯の電源を落とした。

そんな私の様子を、澤村が見ていたことなんて気づくことなく、私は食事を再開した。

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