たとえ届かない人だとしても | ナノ
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▼ 最終選別


今日は、遂に最終選別の日。
鬼殺隊にはいる為、この日の為に頑張ってきたんだ。
私は気合を入れる様に、自身の顔を覆っている面の位置を直す。
この面をつけ始めて一年、その一年、たくさん頑張ってきた。
皮が厚くなり、豆だらけになった掌を見つめ、その拳を握る。
大丈夫だ。私はあの師範に稽古をつけてもらったんだから。



会場を見渡せば、想像していたより多い数の人。
半分ぐらいに減ってしまうのかな。と想像して首を振る。
いや、今はそんなこと考えてはいけない。選別に残ることだけを考えるんだ。


そして、選別が始まった。





ご、にん?

20人ほどいた人間はたったの5人になっていた。
嘘でしょ。みんな、死んだの?

助けられなかった。そんな考えがよぎるが頭を振る。
そんな甘い考えをもってはいけない。
甘い考えは、判断を鈍らせる。判断が鈍れば体が鈍る。それはすなわち死に繋がるのだ。


「刀だよ刀!今すぐ刀をよこせ!鬼殺隊の刀!色変わりの刀!」

ふとそんな怒鳴り声が聞こえ、その声に目を向けると、師範がいた。え!!?師範!?え!!?なんで!?

怒鳴り声を上げている人物が師範に見え、目をこする。
あ、違う人だ。
よくみると全然違う。が、似ている。師範にそっくりだ。
あの柄の悪さなんてそっくりだ。
血縁者だろうか?

そんな師範もどきは痣の少年に腕を掴まれ、なにやら揉めているが触らぬ神に祟りなし、だ。近づかないでおこう。

説明を聞き、わたしは烏を肩に乗せ鋼を選ぶ。
あれがいい。あの奥にある、小さい鋼。

他の鋼に目もくれず、その小さい鋼をとると、額に痣のある先程の少年が「もう決めたのか」と言葉を漏らす。
私は昔から直感で物を選ぶんだよ。心の中で返答して彼の方には振り向かない。
触らぬ神に、だ。

しかし私はこの先、この神に触れることによって、仲間を、友を、己の呼吸を手に入れることになるのだが、それはまだ先のお話。


選別が終わり、私は足早に師範の家に向かう。
この時間なら師範はきっと鍛錬で中庭にいるはずだ。
軽快に門をくぐり、師範がいるであろう中庭へ。
師範の後ろ姿をみつけ、声をかける。
「しは――――、っ」

振り返った師範の雰囲気に、口をつぐむ。
師範、すごく怒っている。

「…」
私の横を無言で通り過ぎた師範に、声をかけれなかった。
しばらくたって振り返ると、そこにはもう師範の姿はなかった。

「師範、私、鬼殺隊の一員になれましたよ…」

私の声は、師範に届かない。


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あとがき

玄弥君が入隊した事が許せない実弥ちゃんは
その事しか考えられません。

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