たとえ届かない人だとしても | ナノ
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -


▼ 風の呼吸


鬼殺隊に入るには最終選別というものに合格しないといけないらしい。
それがいまから、ちょうど一年後にあると不死川さんは教えてくれた。
一年。わたしはこの一年で鬼を殺せるようにならないといけない。

不死川さん、改め、師範の元で修行をつけてもらう事にしたのだが。
驚いた事がある。師範の継子として育てられると、鬼殺隊の方たちに挨拶に行った時、ほぼほぼ全員から「え!?」みたいな顔をされた事だ。
師範、怖がられてるんですね。

ただ柱の皆さんはちがった。
私なんかが挨拶できる立場ではないのに、師範が柱に用があるとかで連れていかれた際挨拶を行うと、岩柱の悲鳴嶼さんは、優しく鍛錬に励めと頭を撫でてくれた。
神妙な顔をする柱の方もいたが、みんな嫌そうな顔はしなかった。柱ってみんな優しいな。

そしてお館様。
不思議な人だ。話すと気分が高揚する。安心する。
師範がすごく礼儀正しくてぎょっとした。
その私の驚きはバッチリばれていたらしく、後に師範に思いっきり殴られた。
痛い。頭が本当に割れたと思った。ここで死ぬかも。


師範の稽古は本当に、ほんとーーーーにきつい。
何度か、内臓が体の穴という穴から出るんじゃないかと心配になったほどだ。
死ぬかもと何回も思った。というか師範に殺されかけた。
稽古というより一方的な殺し合いなのでは?と毎日頭をよぎった。


そして半年間、師範に稽古を付けてもらって気がかりな事がある。

私は、風の呼吸を使いこなせていない。そんな気がするのだ。
しかし諦めるわけにはいかない。何度も何度も刀を振った。
ある日ふと、もしかして甘露寺様のように派生ができるのではと思った。勘だけど。
ただ昔から私の勘はよく当たる。
しかし基礎は風の呼吸で覚えたし、私は風の呼吸が好きだ。
できれば風の呼吸で戦いたい。あとなにか、なにか一つ足せば。

しかしそう悩んでる時間もない。
あの日からあと幾月で一年。もう最終選別は目前に迫っていた。
 

prev / next

[ 目次 ]