たとえ届かない人だとしても | ナノ
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▼ 元・柱 宇髄天元

「あぁ!?来たな血液問題児ぃ!」

第一の試練は宇髄さんの稽古で、初っ端から豪快に呪いをいじられる。
いや腫れ物扱いされる方が嫌だけども!!

「おらおら走れ走れ!」
宇髄さんの激励(?)を聴きながらひたすら走る。
基礎体力の向上。数年前のど素人だった時に比べれば、だいぶ体力はついた。とはいえ、宇髄さんお稽古はなかなかにきつい。

初日が終了して、宇髄さんの奥さんたちが夕ご飯をふるまってくれる。
元柱や柱の方が近くにいるので、稽古中はみんなと同様に稽古場所で寝泊りする。
師範も柱稽古に教える側として参加しているし、師範の屋敷に住む、とは言ったがそれは稽古が終わってからだ。ちょっと残念。だが安心の方が勝つ。
思い出すのは、ゼロ距離の師範の顔。
「うおおおおお」
「ナマエちゃんどうしたの!?」
「いや、なんでも、なんでもない」

突然思い出したあの記憶に奇声があがり、善逸がぎょっとして振り返える。
なんでもないって音じゃないよ!?という善逸の声を無視して、おにぎりを口に突っ込む。
こんな状態で師範と二人一つ屋根の下なんて無理だ。恥ずかしさで死ぬ。死因恥ずか死だ。

なんであんな事したんですか。
涙を止めるためにした意味のない行為ですか。


感覚が戻ったらもう一回っていうあの約束は、有効ですか。


グルグルと回る質問をおにぎりと一緒に飲み込み、私は深呼吸をする。
一旦!一旦忘れよう。いまは修行にだけ集中だ。

(あ、心音が普通にもどった)
「ありがとう善逸。もう大丈夫。」
「なんだかナマエちゃん、雰囲気変わったね。なんていうか、スッキリした様っていうか、良くなった。」
「え、本当に?なんでだろう。」

「恋したんだろ恋!なぁ風柱の継子よぉ!」
「…セクハラですよ宇髄さん」
ニヤニヤとした顔で当然会話に入ってきた宇髄さんに、冷たく返す。
絶対に動揺を見せてはいけない!!!!!
「いやいや話は聞いてるぜ。あの不死川が誰かの為に自害たぁな。」
さらにニヤニヤする宇髄さんに頭を抱える。考えないようにしているというのに!
そんな宇髄さんを奥さん達がそっとしとくべきですよなんて止めてくれるが、まて、誰が何処まで知ってるんだ!?

善逸だけが不思議そうな顔をしていたので、どうやら師範が命をかけてくれている事は柱とその関係者しか知らないようだ。

それ以上の事、例えば、その、キスとか。それがバレたら終わりだ。
ニヤニヤとする宇髄さんの顔を見て、再度やはり一旦忘れるべきだと強く誓った。

十日位ほど宇髄さんのところで過ごし、善逸と一緒に次の稽古へ向かう。
…なんだか、稽古以外で疲れた気がする。

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