たとえ届かない人だとしても | ナノ
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▼ 緊急柱会議

 
男、不死川は産屋敷邸にいた。
不死川だけじゃなく、柱全てがこの日、この時間、この場所にいた。

この日産屋敷邸では緊急柱会議が行われていた。
上弦との戦いを終えた甘露寺と時透の姿は、思ったよりも元気そうだった。
重症だと聞いていたが、いつもより回復が早くないか?
そう思ったのは不死川だけでは無かったようで、胡蝶が素直にその疑問を口にする。

「大変お待たせしました。」
その時、あまね様が参られ、柱会議が始まった。

突如、数名に出現した痣についてだ。
痣が既に出た甘露寺と時透によれば、痣の出現の鍵は二百を超える心拍数と、三九度以上の体温。

「チッそんな簡単なことでいいのかよォ」
「これを簡単と言ってしまえる簡単な頭で羨ましい。」
自身の呟きに、横にいた冨岡がこちらを見ずに返答する。

「何だと?」
「何も。」

本当にムカつくやつだ。あまね様の前でなければ斬りかかっていた。

そんな俺達なんて気にする様子もなく、会議は進んでいく。
そしてあまね様は最後に、痣がでたものの「今後」を説明して部屋を後にした。




「なるほど…しかしそうなると私は一体どうなるのか…南無三…」
柱だけになった部屋に、悲鳴嶼さんの数珠の音が響く。
その時、またとなりの男、冨岡は言葉を発した。
「あまね殿も退室されたので、失礼する」
「おい待てェ、失礼すんじゃねぇ。それぞれの今後の立ち回りもきめねぇとならねぇだろうが。」
「6人で話し合うといい。俺には関係ない。」

そのセリフに、柱数名の空気が変わる。
伊黒のネチネチとした言葉も、この部屋の空気も無視し、退室しようとする冨岡の姿に声を荒げて静止するも、冨岡はまたしてもこちらを見ずに「俺はお前達とはちがう。」などと言ってのける。

あぁそうかよ。本当に感に触るやつだ。

『師範、冨岡様の所で修行をさせていただきました。新しい呼吸、師範に今度見てほしいです。』
クソ生意気な弟子からの手紙を思い出し、さらに怒りが湧く。

甘露寺の静止を無視し、俺は冨岡に向かって走りだす。


パァン!!!

肌に突き刺さるような音。悲鳴嶼さんが出した音に、俺だけでなく、全員の動きが止まる。

「座れ…話を進める….一つ提案がある…」

悲鳴嶼さんの提案、柱稽古についてあーでもないこーでもないと話し、やっと決まった稽古の順番や役割。
ではこれで会議を終了する。そう悲鳴嶼さんが告げようとしたとき、甘露寺が手をあげる。

「あの、この間の戦いなんですけど… ナマエちゃんが人間に攻撃されていました。その人、人間なのに鬼を従えてたんです…。しかも、なんだかとても、ナマエちゃんとその人…只ならない様子で…。」
「あぁ?」

突然出てきた自身の弟子の名前。
しかも鬼を従う人間と戦っていただと?
俺はそんな話、聞いていない。ここまで考え、俺は自身の発想に舌打ちをする。なにを考えてるんだ俺は。
別にもともとあいつと俺はそんなに言葉を交わす程の中じゃない。あいつが勝手に文を送ってくるだけだ。

それに、と甘露寺が続け、ちらりとこちらを見る。

「なんだか、その人とナマエちゃん、顔が似てた気がするの…。」

その言葉に、全員から警戒の気配が出る。
鬼の味方をする人間の血縁者。
それだけでミョウジナマエは、危険分子だった。
内通者。そんな言葉が頭を過るが、俺はすぐにバカバカしいとその考えを捨てる。
俺は、あの日からあいつを見てきた。あいつを育てた。鬼を憎むあいつを、誰よりも近くで。
あいつが、鬼殺隊を裏切るなんてあるわけがない。

しかし血縁者と決まったわけではないが、あいつは説明する義務がある。その鬼を操る人間との関係を、俺たちに。


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