たとえ届かない人だとしても | ナノ
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▼ きょうだい

 
烏に言われるまま走り続けると、里が見えてきた。

里のみんなは無事だろうか。
炭治郎はあの怪我だ、もしかしてまだ里にいるかもしれない。
色々な考えが巡るが、視界に異形をとらえた瞬間、私それに斬りかかる。
金魚のような異形が数体倒れるのを確認して、再度走り出す。

しばらく走っていると、頭上に影がかかった。
視線を上に向ければ、長い髪を月光に反射させ、特殊な形をした刀を構える甘露寺様の姿。

綺麗だ。

こんな状況なのに、場違いにも私はそう呟いた。

「甘露寺様!ここは私が!本体の方に向かってください!」
「ナマエちゃん!うん!わかった。お願いね!」
はいと答えた時には、もう甘露寺様の姿はなかった。
本当に、柱というのは…!
私も気合を入れて刀を握りなおした。







「…へぇ、ナマエも来てたんだ。ちょっと困ったなぁ。まだ会うわけには行かないんだけど。」
屋根の上から里を見渡せば、刀を握るナマエの姿をとらえる。
相変わらムカつく顔してるなぁ。

「ヒョッヒョッヒョッ アレが例のお前の妹か、顔つきがにている!ヒョッヒョッヒョ」
「まぁね。…まだ殺さないでよ。ナマエは俺の獲物だからね。」
「ヒョッヒョッヒョ本当に癪に障る男だのうお前は…無惨様のお気に入りでなければお前なんて私が」
「五月蠅いな。早く持ち場に行けよ。」
「ふん…精々、非常食としての自覚を忘れるなよ」
ヒュンっと消えた玉壺に、僕はため息をはく。
無惨様ともあろう美しい方が、あんな下劣なものを近くに置くなんて。
まぁいい。無惨様は存在する事自体に価値があるんだ。それに今の問題は…

「…予定より早いけれど、作戦を実行しよう。」

僕は仮面を投げ捨て、ナマエの方に向かって飛び出した。






「!」

なにか来る。
刀を構え、向かってくるナニカを待ち受ける。
鬼、じゃない、人間!

相手の短刀と、私の日輪刀が激しくぶつかり合う。
「やぁ久しぶり、ナマエ!元気だった?…って言っても僕の事覚えてないよね。」
「な…っ」
「ほら、早く思い出して。」
振りかざした短刀を、私に向ける出なく、男は自身の腕に突き刺す。
男の腕から血が噴き出す。
「僕の血の匂いを嗅ぐと、忘れた記憶をすべて思い出すようにしてるんだよ。」
血の匂いを嗅いだ瞬間、多くの記憶が映像として脳に流れて混んでくる。

あの月の晩の記憶
あの嵐の日の記憶
いままでの、兄との記憶

「お、に、ちゃ…」
「…やあナマエ。思い出してくれてうれしいよ。」

赤い目が、三日月のように細くなった。
 

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