▼ 存在感
「きっ…もちー…。」
温泉は想像よりも広く、私は深く浸かって足を延ばす。
なにこれ最高。温泉万歳。
「極楽…。」
んーと伸びをすれば視界に広がるのは綺麗な空。
空気もおいしいし…こんな寛いでいいのかな。
「ナマエちゃんおまたせ〜!」
「いえ、そんなことは…っ!?」
甘露寺様の声が聞こえ、振り返るとそこには圧倒的存在感のソレ。
普段気にした事はなかったが、そっと自分のソレに手を当てて、甘露寺様を再度みると、すこし悲しくなった。
「?」
「…いえ、なんでもないです…。」
温泉につかりながら甘露寺様と話をしたが、よく考えると甘露寺様と二人でしゃべるのは初めてだ。
イメージ通り、明るくて話やすく、可愛らしい人。
「この温泉ね、お肌がツルツルになるの!」
「そうなんですね。いいなぁ。毎日でも入りたい。」
「うふふ!そうよね。…うれしいな。」
「なにがですか?」
「ナマエちゃんとゆっくりお話が出来て!たまに顔を合わせてはいたけれど…お互い任務が忙しくて、会話と言っても挨拶程度だったから。」
だから嬉しい。そう言って笑った甘露寺様に、心臓がきゅんと高鳴る。
「私も…嬉しいです。」
「わぁ!私ナマエちゃんの笑顔初めて見た。うふふ、とってもかわいい。」
普段言われ慣れない言葉に、私の顔に熱が集まる。
「ふう、そろそろあがろっかな。ナマエちゃんはどうする?」
「…もう少しして上がります。」
じゃあ先に行くね。そう言って甘露寺様が立ち上がった瞬間、ありがとうございました!とやまびこが響いた
「ん?感謝のやまびこが聞こえた。誰か来たのかしら?なんだかドキドキしちゃう。ね、ナマエちゃん。」
「…ソウデスネ」
私は今、目の前の甘露寺様の素晴らしすぎる体にドキドキしてます。なんて口が裂けても言えず顔をそらした。
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