たとえ届かない人だとしても | ナノ
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▼ 共に戦ってきた刀

 
「うわ!?」

任務中、鬼の首を斬り終え、刀を鞘にしまおうとした瞬間に私の刀が刃こぼれした。
那田蜘蛛山で酷使してから、何か嫌な予感がして手入れは十分に行ってきたが…
結構な大きさで欠けた刀にため息をつく。
そうだよなぁ。ここまで共に戦ってきたが、鼓の屋敷や那田蜘蛛山、そして無限列車…そのほかにも沢山の任務があった。ここまで耐えてくれた事に感謝をするべきかもしれない。

あれ?どこかの任務で短刀を受け止めたと思うけど…あれはいつだっだか。
まあいい。烏に刀がダメになったことを伝えると、刀鍛冶の里に行く許可が下りた。

行っていいんだ…。





「どうもコンニチハ。ワシこの里の長の鉄地河原鉄珍。よろぴく」
長に挨拶をして、私は刀を見せる。
「すみません。せっかく鉄穴森さんに打ってもらったのに刃毀れさせてしまって…」
「気にするんじゃない。鈍を作るほうが悪いのや。」
先程とは違う雰囲気は、有無を言わさない気迫があった。
「まぁ鋼蔵は今野暮用で席を外してる。戻ってきたら研ぐよう言うとくわ。…よく見ると体中怪我だらけやないか。うちの里の温泉は弱った体によく効くから、研ぎ終わるまではいってき。」
「ありがとうございます。」

鉄地河原さんに頭を下げ、私は案内された温泉に向かう。
その時遠くから声をかけられた。

「ナマエちゃーん!」
「甘露寺様!」

手を振りながら走ってくる姿は、間違いなく恋柱の甘露寺蜜璃様だ。
「きゃあ!久しぶりっ!奇遇ね。私も今来たところなの。ナマエちゃんも?」
「お久しぶりです。はい、ちょうどいま鉄地河原さんに挨拶が終わった所です。」
「本当?私は今から挨拶に行く所なの。この後温泉に入るの?ね、一緒にはいろー。」
「一緒に!?あ、いや、わかりました。」
「やった〜、じゃあ先に言ってて?挨拶が終わったら私も向かうね。」
嬉しそうに笑う甘露寺様に、遠慮しますなんて言えず頷いてしまった。

しかし温泉か、久しぶりだな。

 

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