たとえ届かない人だとしても | ナノ
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▼ おかえり

 
それから数日後、伊之助の顔を拭いていると、その手を掴まれた。
掴んだのは、いま横になっている伊之助。

「いの、すけ…?」
「…腹減った。」

役二ヶ月ぶりに聴いた伊之助の声に、私は自然と笑みがこぼれ…
「おかえり、伊之助!」
その手を包み込んだ。


伊之助は二ヶ月も寝ていたとは思えないほどの量の食事を平らげた。
最初は茶粥だけだったが、驚異のスピードで回復していき、数日後には天ぷらが食べてえ!と叫んでいた。
…やっぱり回復力が恐ろしいな。

そして伊之助から遅れる事七日。炭治郎も目を覚ました。
稽古中に後藤さんの大声が聞こえ、走って炭治郎のもとに向かうとみな炭治郎が目を覚ました事に泣いて喜び、伊之助に至っては炭治郎の布団に乗っかている。
いややめろ!
ぎゃーぎゃー騒ぐ周りと反比例して、炭治郎は安らかな顔をして再度眠りにつく。
「…おかえり、炭治郎。」
彼の額を撫でれば、伊之助が同じタイミングで叫ぶ
「あー!またコイツ昏睡した!」

縁起でもない事を言うんじゃないよ。


遅れて善逸が任務から戻って来て、次の日の朝は久しぶりに炭治郎の部屋で四人でご飯を食べた。
そして一週間には炭治郎は復活して、稽古に参加した。

恐るべし回復力。
胡蝶様にミョウジさんは回復力がありますねと言われたが、こいつらを見ていると私なんて平均なんじゃないかと思えてくる。
 

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