たとえ届かない人だとしても | ナノ
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -


▼ 待つ気持ち


炭治郎と伊之助が目を覚まさないまま二ヶ月が過ぎた。

師範の屋敷に戻ったその日の晩に、ボロボロになった炭治郎達が蝶屋敷に帰って来たと烏から連絡があり、すぐさま私も蝶屋敷に向かった。

それから約二ヶ月。
炭治郎と伊之助は、まだ目を覚まさない。
先に目を覚ました善逸や、蝶屋敷のみんなと交代で二人の様子をみた。

「ミョウジ、任務終わりだろ。煉獄さんの所にも言ってるみたいだし…無理するなよ。寝たほうがいいぞ。」
隠の後藤さんに声をかけられるも、頭を横に振る。

「ありがとうございます。でも、目を覚ました時に一人だと、寂しいかもしれないので…。」
思い出すのは私が目覚めた時の事。
はじめてここに来た時は、胡蝶様が、無限列車で血を流しすぎた時は、伊之助が。
待っている人がいる。それがどんなにうれしいか、私自身が経験してわかった事だ。

「…みんな、まってるよ。」
横たわる伊之助は、綺麗な顔が苦痛で歪ませていた。
伊之助は毒が効きづらい分、薬も効きづらいのだとアオイちゃんが言っていた。

目覚めない伊之助の体を濡れたタオルで拭き終わり、私は伊之助の手を握る。
泣いてはダメだ。彼らは使命のもと戦った。そして上弦の鬼を前にして、生きて帰って来たんだ。生きてる。みんな。

「…本当に君たちはすごいなぁ。」
一緒に歩いてるつもりだったけれど、三人はどんどん先に行く。

烏が稽古の時間を告げるので、伊之助の手を放し立ち上がる。
二人に付きっきりで稽古を怠ったなんて事になったら、伊之助達は怒るだろう。それに、私は君たちと並んで歩きたい。
「強くなるよ。私も。」
最後に伊之助の頭を撫でて、私は稽古に向かった。
 

prev / next

[ 目次 ]