たとえ届かない人だとしても | ナノ
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▼ 水の呼吸


煉獄様が目を覚さないまま、4ヶ月が過ぎようとしていた。
炭治郎達と毎日鍛錬をしながら、合間に入る指令に従い鬼を倒していった。

善逸も伊之助も炭治郎も、みんなみんな、いままでよりも強くなったと思う。
実力はもちろんだが、気持ちの方も。

私はというと、1ヶ月も眠っていたせいか数週間ほどは感覚がなかなか戻らず、思ったように体が動かない日々が続いたが、なんとか体の調子も戻ってきた。
前回からしようとしてたことをするなら、いまがその時かもしれない。
初めて炭治郎の剣術を見てから思っていた事。
しかし、風の呼吸の使い手の師範とあの方は、仲がよろしくない。
それにあの方は、なかなかつかまらない。
さらに私はあの方と、まともに話した事がない。
あの任務で話したくらい、かな。
だが、いつまでも萎縮していてはダメだ。
全ては強くなる為。あの方に、訓練をつけてもらうーーーー。

炭治郎達が訓練をしているうちに書き置きを残し、蝶屋敷をあとにする。
まぁ、話すと長くなるし、彼らの修行の邪魔をしたくはない。
そして私は、あの方の屋敷に向かった。


「お願いします。稽古をつけて下さい。」
「断る。」

深々と頭を下げる私を、秒殺する冨岡様。
カチン。いやいや、いけない。柱様相手にムカつくなんて失礼だ。

「お願いします。基礎だけでいいんです。水の呼吸を教えて下さい。」
「断る。お前は不死川の継子だろう。風の呼吸を使う剣士だ。水の呼吸を必要としてるとは思えない。」
視線すら合わせず言い放つ冨岡様。
ぐ……せめてこっちを見ろよ……いやいや、見てくださいよ。


「風の呼吸、が、私にはあってないんです。」
「……。己の弱さを呼吸のせいにするのか。」
「ちがいます!己の未熟さは重々承知。しかし、あの炭治郎が使った水の呼吸、それに風の呼吸を使って、私自身の、私にあった私だけの呼吸を作りたいんです。お願いします。冨岡様。一体でも多く、鬼を斬れる可能性がある事を、すべて試したいんです。」

さらに頭を下げる私に、冨岡様がため息を吐く。

「今やるべきは、自身の呼吸を高める事じゃないのか。」
「はい。冨岡様のいうことは最もです。しかし甘露寺様も、炎の呼吸から派生して自身の呼吸を作ったと聞きました。お願いします。いままでの鍛錬は怠りません。だから、どうかお願いします!」

やっとここで、冨岡様の視線を感じる。しかし、頭を上げることはできない。
この気持ちが伝わるまで、絶対に頭を上げるものか。

「…俺は他の柱とは違う。教えるをする立場じゃない。」
「…っ」

やはり、だめ、なのだろうか。

「勝手に見て覚えろ。教えはしない。」
「!」

冨岡様の言葉に頭をあげれば、もう彼は歩き出していた。
いまのって、いまのって!

「はい!勝手に見て!学ばせていただきます!」

こうして私は、水柱、冨岡様に付き纏う日々を始めた。
 

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