たとえ届かない人だとしても | ナノ
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▼ 全てが終わった。と、思ったんだ。


「は!!!!」

生きてる、生きてる、生きてる!!
目を覚まし、反射的に自身の首をさわれば頭部と体は繋がっていた。
高まっている鼓動を3秒で落ちつかせ、辺りを見回す。

手についた縄のような物。それが燃え落ちている。
炭治郎が言っていた、那田蜘蛛山で発揮したという禰豆子ちゃんの炎だろうか。

「うおーー!猪突猛進!!!」
「伊之助!」

私に遅れること数秒、伊之助が目を覚ます。
炭治郎の姿はもうなく、それを察した伊之助がドアを蹴破り、車両から飛び出す。
だから!なんでそんな大声を出して毎度毎度敵に自身の状態を知らせるんだ!!!

私も伊之助を追いかけようとするが、ぞわり。
背後から感じる『ナニカ』の存在に慌てて振り向く。

汽車が、生きている。

なんだこれなんだこれなんだこれ!!
鬼の気配がする。この汽車全体から!!!

風の呼吸 弐ノ型 爪々・科戸風!


乗客を襲うその禍々しい存在に斬りかかり阻止するも、数が多く連続で攻撃をしなければならない。
自身より奥の方で戦っていた禰豆子ちゃんの異変に気づく。危ない!!
「禰豆子ちゃ…っ!」

雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一閃 六連

「禰豆子ちゃんは、俺が守る」
「善逸!!」

禰豆子ちゃんを救った善逸の姿に、思わず笑みがこぼれた。
無事だ。善逸も!そして善逸のおかげで、禰豆子ちゃんも!

次の瞬間、私の横を風が通り過ぎる。
その風が通ると、汽車と癒合した鬼の一部が次々と崩れ落ちる。

あの風、間違いない。凄まじいスピードで煉獄さん様が通り抜けたんだ!!

大丈夫だ!勝てる!剣士が四人!柱が一人!そして禰豆子ちゃんもいる!

自身に言い聞かせ、刀を握った手に力を込めた。
前方にいるであろう、炭治郎、伊之助を信じるんだ。
鬼の本体は二人に任せよう。
いまは乗客を守ることを考えるんだ!誰も絶対に、死なせない!


暫くして、汽車の動きが止まった。
鬼の気配が消えた。炭治郎達が勝ったんだ!
そう思った瞬間に、汽車が激しく揺れる。
まずい!乗客を守らなければ!でも、でもどうやって…!

「うむ!よく耐えた!もう安心していいぞ!」
「煉獄様!」

気づいた頃には、煉獄様がたくさんの技を出し車両の被害を抑えてくれた。
炎柱様の実力に背筋が震える。

「乗客を安全な場所に移動させてくれるか!俺は竈門少年達のところへ行ってくる!」
「…はいっ!はい!本当に、ありがとう、ございます!!」

私達だけじゃ、死なせていたかもしれない。彼らを。
まだ意識を取り戻さない乗客達。
誰一人死んでいない事にほっと胸をなでおろす。

ありがとうございます。
煉獄さん。炭治郎、伊之助、善逸、禰豆子ちゃん!!

誰も死ななかった事に、私は心から感謝をした。


乗客を移動させよう。
念のため一人ずつ、息があるかも確認して。
確認しているうちに、みんな無事な事に安心して、つい涙腺が緩む。
よかった。もう、那田蜘蛛山のような事はごめんだ。

繭になってしまった剣士達。
首を折られた剣士達。
救えなかった人達を思い出しては、今でも心が痛む。

今回は誰も死ななかった。それが本当に嬉しかった。



刹那

「っ!!」

嫌な、予感がした。
禍々しく、恐ろしいナニカ。
この汽車と融合した鬼とは比べ物にならないほど恐ろしいナニカ。

何度も言うが、私の勘は、不幸なことによく当たるのだ。
 

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