たとえ届かない人だとしても | ナノ
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▼ 生きるも死ぬも貴方次第


いまごろ会議が行われている。
師範も間違いなく参加している。
私はおそらく、破門される。

禰豆子ちゃんの存在を知っていた私と我妻と嘴平は、治療もあわせて蝶屋敷で監視されていた。
そんな状態で竈門の帰りを待つが、気が気ではない。
禰豆子ちゃんは、竈門は無事だろうか。

もうどのくらいこうして待っただろう。
もう会議は終わっているはずだが…


「おい。」


声をかけられ、はっとした時には遅く、気が付いた時には師範に馬乗りをされていた。
気配が!なかった!

「簡潔に答えろォ。おまえ、どういうつもりだァ?」
「し、はん。私は」

首を絞められ、息が出来ない。師範、師範私、私は。
「ちっ。まだこんなもんつけてんのかよォ。あぁ?人の目が怖いビビリがよォ。」
私の顔を覆い隠していた面を剥ぎ取られ、師範と視線が絡み合う。

人の目が怖い。正確には、人と視線を合わせるのが怖い。あの時の妹を思い出す。
そして、視線を合わせることで関わるのがこわい。大切なものができるのは判断を鈍らせるから。そのためにつけたお面。だけど。
薄い酸素の中思い出すのは、竈門達の姿。
こんなモノを付けていても、仲間が出来た。
そして、仲間のおかげで私は、何度でも刀を握れる。

こんなモノ、私には。もう、必要ない!

いままでだったら外していた視線を、師範から逸らす事無く見つめ返せば、師範の眉間がすこし動いた。

「一丁前に睨み返しやがってよォ。もう一度聞く。答えによっては殺す。おまえどういつつもりだァ?」
先ほどよりも鋭くにらみつける師範の視線を、変わらず私は受け止める。
「竈門達を…」
「あァ?」
「竈門達を見た時、期待を、したかった。鬼が人を守るのなら、私の妹は人間として死ねたんだと、思いたかった。彼らが、妹の思いを、証明してくれるんじゃないかって…!そう、思ったんです…!」
「……。」
「師範が!あの言葉で私を救ってくれた!私はあの言葉で生きています。師範の気持ちを裏切った私は、師範になら殺されてもかまい、ません!」

一気に言葉を紡ぐと、私の首を絞めていた師範の手が緩んだ。
黙って師範は私から離れる。嫌われた、だろうか。

「次はねェ…次なめたマネしたら殺すからなァ。」
咳き込んでいる私に、師範はそれだけ伝えて部屋を出て行った。
「っ!…はい!」

精進しよう。こんな私に次をくれる師範の情けを裏切らない為にも。
もう、見えなくなった師範の背中に、私は頭を下げた。












「そんな、いいもんじゃねぇよ。俺がおまえに言った言葉はよォ。」

師範が廊下で一人、私の首を絞めた手を見つめ呟いていた事を、私は知らない。
 

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