▼ 一難去ってまた一難
医療の知識は、稽古の合間に蟲柱様からすこしだけだが教わっていた。
何人かの隊員の止血をしながら、蟲柱様に教わった知識を精一杯思い出す。
するとあのゾワゾワとした悪寒が無くなった。
だれかがまた鬼を倒したんだ。しかも何体も。
悔しい。
自分が弱い事が、悔しい。
噛みしめた唇から、血が流れる。
今回の任務、私はなにも出来なかった。なにもだ。
「あらあら。お久しぶりです。どうかされました?」
「胡蝶様!!」
突如、頭上からかかった声に頭を上げれば、胡蝶様の姿。
気配が全くなかった…。
「さぁ怪我人を。蝶屋敷に運びます。…無事で何よりです。ただ……ミョウジさん。あなたも、竈門くんのつれている鬼について、何か知っていますね?」
「…っ」
突然の言葉に、肩がびくりと跳ねる。
「あらあら。ハッタリだったのだけれど……。あなたも拘束対象ですね。」
「ねず……あの鬼の子はどうなりましたか。」
「ご自身の心配より鬼の心配、ですか。不死川さんが知ったらどう思いますかね。…あの鬼は、お館様より屋敷に連れ帰るように伝令がありました。竈門くんも、冨岡さんも一緒にです。」
冨岡さん?なぜ冨岡さん?
困惑する私に胡蝶様はふふ。っと笑う。
「詳しく知っている、と言うわけではないようですね。」
可愛らしい笑顔。だが目が、笑っていなかった。
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