たとえ届かない人だとしても | ナノ
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▼ 私は弱い


「くそ!どこに行った!」
「落ち着け!気配を探せ!」
「うるせぇわこら!いまからする所だわ!!」

そこかぁ!!!
数秒程集中した嘴平が、勢いよく上を見上げる。
嘴平の視線に合わせて上を見上げると、木の上に奴がいた。


なにか、様子が変だ。
そして、その鬼は姿を変えた。






嘘だ。
脱皮した鬼は想像したよりも強く、何度斬りかかっても、私も嘴平も吹っ飛ばされる。
そして、嘴平の頭が掴まれ嫌な音を立てる。
殺される。嘴平が。
「うわあああああああ!」
そう脳が判断した瞬間、私はほとんど無意識で声を上げ、嘴平をつかんでいる腕に斬りかかるものの、その刃は腕を通らない。かたい。くそ。くそ。くそ。

「嘴平ああああああ!」
死なせたくないのに、死なせたくないのに!

ドン!!

瞬間、何かが横を通過した。
そう認識した時には、鬼の腕が斬られ、地面に転がっていた。

そして、鬼が崩れ落ちる。

なにが、起きたんだ。慌てて視線を動かせばそこには。
「水、柱…様……」

私達が二人で苦戦していた鬼を、一瞬で冨岡様が倒した。
強い。柱だ。師範も強いがやっぱり柱っていうのはとんでもない人種なんだ。
まだまだ師範の背中は遠いな……。

「おまえ……不死川の継子だな。」
「はい。危ない所を助けていただきありがとうございます。現状は人を操る鬼が一体べつの隊員により撃破。
怪我した隊員はまとめて一塊に隠れてもらっています。私は怪我は肋骨を二本。右手の指を二本折れていますが、まだ戦えます。この猪頭は…「おいこら半々羽織ぃぃ!俺と戦え!!」…おい!!」


状況を簡潔に説明する私を遮り、冨岡様に叫ぶ嘴平にくらりとする。
この、この…!怖いもの知らずめ!
自分と相手の技量の差もわかないのか!?この!この!すっとこどっこいが!!!!

わなわなと震える私に目もくれず、ギャイギャイと冨岡様に失礼を働く嘴平。
「修行し直せ!戯け者!」
「はぁぁん!?」
冨岡様にしては珍しい大声に、私は慌てて嘴平を叩く。
「おっしゃる通りです!はい!ほんとに!すみません!おまえもうほんと黙れ!」
「そいつは十二鬼月ではない。」

冨岡様の言葉に取っ組み合いをしていた私と嘴平はピタリと止まる。
冨岡様に再度ぎゃいぎゃいいう嘴平だが、私は言葉を発せなくなっていた。

十二鬼月じゃない?あの強さで?
さらに強い鬼が存在するのか。最低でも12体も。

ハッと気づいた頃には、嘴平は冨岡様によって木に吊るされていた。

「!!!!?」
はやい。あまりの速さに恐怖すら感じる。
「おい、おまえ。」
「はい!!!」
「いいか。この山にはおそらく十二鬼月がいる。おまえじゃ死ぬ。だからおまえは他の隊員を守れ。」
「…っ」

これは、戦力外と言うことだ。私じゃ弱い。足手まといなのだ。
「承知、しました。」
だがやる事がないわけではない。
一人でも多くの命を救うのだ。
「おい!ざけんな!おい!お面野郎!俺をおろせ!」
「嘴平、自分の怪我の状態を理解しないといけない。無駄に死にに行ってはいけない。」
「はぁぁ!?大丈夫だっつの!おい!おろせ!このくそお面!「嘴平!」あぁん!?」
「嘴平、いや、、、うん。伊之助。君が生きていて、私は嬉しい。」
「ほわ…って!おい!戻ってこいこのお面野郎!」
伊之助の叫びを背に、私は無視をして走り出す。
あれだけ叫べるなら大丈夫だな。うん。
 

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