たとえ届かない人だとしても | ナノ
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▼ 第六感が告げる


任務の帰り、カラスに那田蜘蛛山に向かうように言われた。
私任務入りすぎじゃない?
ここ最近は任務続きだったので、大きい怪我こそないものの、体は傷だらけの汚れだらけのボロボロだ。
絶対師範だ。任務を多めに入れるように伝えているに違いない。
まぁたくさん鬼を救済できるのだから願ったりな事だが。



那田蜘蛛山を見た瞬間、
全身の毛が逆立つ。ここは危険だ。嫌だ。ダメだ。
第六感がそう告げる。
だが、戦わなければならない。私は鬼殺隊なのだから。

脳裏に浮かぶ妹、そして竹を加えたあの少女。
戦わなければ。多くの人を、鬼を、救済する為に。


人に戻れない鬼は、死で救済するしかない。
なんとも私のエゴな考えだ。最低だ。
でもそう思うしか、いられない。
私はあの日の妹が消えた事を、いまでも、これから先妹が人を食べるよりは良いかもしれない。と、そう思ってしまったのだから。


竈門。私は正直君に嫉妬をしている。
妹を信じる事が出来た君も、その期待に応えてる禰豆子ちゃんも。

でもね。あの子は私の大切な妹。
あの子の姉である事を私は誇りに思っている。
だから私は、鬼を斬るんだよ。

ああいけない。一人でいると考え込んでしまう癖がある。
五人でいたあの日は、楽しかったな。
たった一晩だったが、竈門達といた時間は楽しかった。
大切なものが増えると判断が鈍る。だが、大切な人が増えると力にもなる。
悪いことばかりじゃないな。
また五人で会いたい。そう強く思った私は、生きる為、刀を握り那田蜘蛛山へ足を踏み込んだ。



山に入った瞬間、突然襲われ、刀を降るうが相手の姿をみてぎょっとする。
人間だ!隊服を着ている!!
寸前の所で刀を止め、後ろに飛び下がる。
殺してはいけない。操られている。鬼の能力だ。
きらりとひかる糸を見つけて斬りつけるも、再度繋がる糸。
拉致があかない。考えろ。考えろ。
操られてる剣士達を木に絡め、身動きが取れないようにするも、かなりの人数に囲まれている。全員を絡み付けるなんて骨が折れるな。そう思った瞬間。

ゴキン。

ぶら下がっていた隊員の首が、人間の可動域を超えた方向に向いていた。

この、クソやろうが!!


動かせないと知ったやいなや、殺した。人間を。鬼が!
まるで使い捨ての人形のように。
これでまだまだいる操られてる隊員達を木に下げるわけにはいかなくなった。
そんな事をしたら、みんな殺されてしまう。

糸を切り、しかし再度また操られ。
それを何度も繰り返した。気絶させても関係ない。攻撃してくる。
どうすればいい。どうすればいい。
蜘蛛を殺すしかない。この小さな無数にいる蜘蛛を。

風の呼吸弐ノ型 爪々・科戸風!

蜘蛛を一掃するもまだまだいるようで拉致があかない。
殺して、殺してくれ。所々から聞こえる隊員の声に頭がおかしくなりそうだ。



おまえは、甘すぎんだよォ。



いつの日か、師範に言われた言葉を思い出す。
でも師範。私、できません。彼らを殺すなんて。できません。

風の呼吸ーーー…!

何度も何度も蜘蛛を殺した。
すると突然操っていた糸が一斉に切れた。
それにより、隊員たちがガクンと崩れ落ちる。
鬼がやられたんだ!誰かが鬼の頸を斬ったんだ!
操られていた隊員が死なずに済んだ事に喜ぶが、今回はたまたまだ。
たまたま運が良かった。私のこの判断で他の人が死んでいたかもしれない。
私は鬼の頸を斬った名前もわからない隊員に感謝をした。



鬼の気配のする方向に走り続けていると、怪我をした隊員があちこちに転がっていた。
みんな、操られていたのだろう。
一人一人、手を貸す時間がない。
明らかにもうダメな人は申し訳ないが見過ごした。
後ろ髪を引かれたが、鬼を殺さなければいけない。
何人かの治療をして山を駆け回る。


「嘴平!!?」


駆け回っている道中、鬼の腕を二本の刀で切り落としている嘴平がそこにいた。
その鬼を見て直感する。強い。

「ぬぉ!面野郎!おめぇも来てたのか!こいつ、権八郎がいうには十二鬼月ってやつらしいぞ!!!」
十二鬼月!!!その言葉に血が巡る。
師範から聞いていたソレがいま、目の前にいる!!


風の呼吸 壱ノ型 塵旋風・削ぎ!!

「おい!そいつかてぇぞ!!」
嘴平のその言葉も虚しく、私の刃は鋼の硬さの体に弾かれる。
「おい!もっと早く言え!!」
「はぁん!?後から来といてなんだおめぇ!!」
「ごもっともだ!すまん!今のは勢いつけて突進したものの弾かれて恥ずかしく八つ当たりした!!」

鬼はそんな私たちに踵を返し、突然走り出す

「は?」
「あ。」
「何逃げてんだコラァァア!」
「あ!おい!嘴平!」

鬼を追いかける猪を慌てて追いかける。
うるさい!そんなに叫びながら走るな!どこにいるか敵に知らせてるようなもんだろうが!!!!
 

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