▼ そして出会う
初任務が終わった帰り道、カラスがギャーギャーと騒ぎ出す。
トオリミチ!トオリミチ!オニトノコウセン!カマドタンジロウ!以下ニメイ!コウセンチュウ!ムカウベシ!
え、まって、
3人もいるの??私一人での任務だったんだけど???
伝令の内容に若干の嫉妬を覚えつつ、飛び立つカラスを追いかける。
カラスに連れられた屋敷を見れば、たしかに、鬼の気配。
屋敷に入るとくるくる部屋は変わるし、なんか猪頭が走ってしでなかなかのカオスだが、
鬼は何匹かいた。鬼を見ると憎悪。そして悲しみに包まれる。
彼らも人間だったんだ。そう思うと憎悪だけではいられなかった。
人を殺した鬼だ。だけど、だけどこの鬼も、いやこの人たちもまた、生きている人間なのだ。
だから、だからちゃんと
「殺してあげる。」
死こそが、この残酷な世界の唯一の救いなのだから。
鬼を切っていると、屋敷の回転が止まった。
誰かが屋敷を動かす鬼を倒したのだろう。
鬼の気配もなくなったので屋敷の外に向かう、と、
カオスだ。
ボロボロの金髪。
なぜか軟体なポーズを見せる猪。
それをとがめる痣の少年。
なんだ、これ。
頭突きをしたり、そのあと猪の少年が美少女顔だったりとみていて飽きないが、猪の少年が気絶した事により私は我に帰る。いかんいかん、しっかりしなければ。
ここにある死体を埋葬したら、屋敷に戻ろう。そう思った矢先、金髪の少年が抱えている箱から気配を感じる。
鬼、だ。
殺さねば。
私が殺気を出した事により、痣の少年が素早く箱の前に立ちはだかる。
抜きかけた刀を止め、その少年の瞳に息をのむ。
なんだその目は。その目はまるで
大切な者を守る目だ。
ごめんなさい師範。
絶対に師範はこの行動を許さない。
場合によっては破門されるかもしれない。
けれど私は、この少年のこの目をみた後に、その箱を無理やり開けて首を切るなんて出来ない。
「隊員同士でやり合うのは禁止、だろ。」
刀をしまう私に少年はポカンとしたが、「ほらはやく、埋葬をしよう。」と伝えると、
ああ!と笑顔でうなずいた。
「君も最終戦別でいただろう?無事で何よりだよ。俺は竈門炭治郎。彼は我妻善逸。あそこで気絶してるのは、ハシビライノスケというらしい。」
「自分は……ミョウジだ」
名前はあまり言いたくない。ぶっきらぼうになってしまう口調は、昔からだ。
人見知りなのだ。私は。
嫌な顔をすると思ったが、挨拶を返すと、竈門は「そうか!」と笑顔で握手をしてくれた。
なんだろうこの少年は。すべてが、こう、すべてが…陽だ。
「ミョウジもここで任務してたんだな。」
我妻の言葉に、「別の任務帰りに通り道だったので駆り出されただけだ。」と答えれば、
「助太刀に来てくれたのか!ありがとう!」と竈門はもう何度目かわからない笑顔を向ける。
「まぁ、カラスに言われて。しかしお前らボロボロだな。」
竈門も我妻も、見てて痛々しい程の外傷だった。
そんな会話をしていると、ハシビライノスケが目を覚ました。
なにやら騒いでいるが、竈門はそんなハシビラを無意識に煽って埋葬を手伝わせる。
なんだこいつ。煽りの呼吸の使い手か?
「おい!!面野郎!」
土をかぶせていると、突如大声と共に指をさされ、面野郎とまで呼ばれる。
面野郎だと?たしかに私は面で顔を隠してはいるが野郎では…まて、これもしかして男と勘違いされてないか?
「こらイノスケ!人を指さしてはいけないよ!」
「なにこいつほんとこわい。」
二人とも、ハシビラの野郎発言になにも言わないあたり、こちらも勘違いしているのだろう。まぁいいか、めんどくさいし。
「面野郎!俺と勝負しろ!いますぐにだ!」
地団駄を踏む叫ぶ猪に、私はため息をつく。
「まぁ、今すぐとはいかないけど、後からならいいよ。刀を交えれば自分も強くなれる。隊員同士でやり合うのは御法度だが、修行の一環ならいいはずだし。」
「なに言ってるかわかんねぇよ!!今すぐだ!」
「わかれよお前。頭悪いのか?」
「なんだとおおおぉ!?んなわけあるか!」
「本当に悪くないのか?ハシビラってどう書くんだ?」
「俺は読み書きできねぇ!!!だが頭は悪くない!!褌になら名前は書いてある!!!」
「たしかに、読み書きできるから頭がいいとは限らない。学があるのはいいことだが、頭の良し悪しは別だ。それを知ってるとは君は思ったより頭がいいかもしれない。あとで褌を見せてくれよ。」
「ふん!だろう!俺は頭がいいんだ!」
そんな話をしていると、ふと竈門と我妻の視線を感じる。
そこに目を向ければコソコソしている二人。
「炭治郎なんかあの二人の会話頭おかしいよぉ!絶対あのお面も変なやつだよぉ!」
「そういうなよ善逸……」
おい待て、こんな猪と同じにされるなんて心底心外だな。
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