夜の街をかける朝風 | ナノ
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▼ 遊郭へ

注意
こちら当サイト連載中の「たとえ届かない人だとしても」の
IFストーリーです。パラレルワールドとしてお楽しみください。





風の呼吸から派生した自身の呼吸…嵐の呼吸を会得してから私は蝶屋敷へ向かった。
するとどうだ。屋敷の方からなにやら女の子の叫び声が聞こえる。
慌てて向かうと、音柱…宇髄様がなほちゃんとアオイちゃんを抱えている所だった。
なほちゃんやきよちゃんは声を出して泣いているし、カナヲちゃんは宇髄さんの服を引っ張って止めているようしで、私はどうしていいかわからず立ち尽くしてしまう。

「と、突撃ーーー!」

なほちゃんときよちゃんの叫び声に、私はハッとする。
「う、宇髄さ───」
「女の子になにしてるんだ!手を放せ!」

背後から聞こえた炭次郎の声に、時が一瞬止まる。
「人さらいです〜助けてください〜!」
きよちゃんの言葉に、宇髄さんが「この馬鹿ガキ」と声を上げるが、たしかに人さらいにしか見えない絵面だ。

よくよく話を聞けば、任務で女性が必要なのだという。
宇髄さんの言い分もわかるが、アオイちゃんにもアオイちゃんの事情がある。
刀を握れなくても、仲間をしっかりと支えている彼女は立派な鬼殺隊だ。

彼女の代わりに俺たちが行く!と叫ぶ炭次郎。
宇髄さんの両脇には、闘争心むき出しの善逸と伊之助がいる。
もちろん、私もだ。


「あっそォ。じゃあ一緒に来ていただこうかね。ただし絶対に俺に逆らうなよお前ら。」
パァン!とアオイちゃんのお尻を叩く宇髄さん。
嫁入り前の女の子に何てことをするんだ!

ポイと投げられたアオイちゃんを慌てて抱きとめる。

「ナマエ…!」
涙目なアオイちゃんをよしよしとなだめ、そっと地面におろす。
ふと視線を上にあげると、宇髄さんがこちらを見下ろしていた。

「お前不死川の継子だろ。不死川に許可取らねぇとなぁ。」
「…こちらから文を出しておきます。任務も今しがた終えてきたばかりですし、師範にはなるべく多く任務に出るように言われているので、願ったりですよ。」


私の言葉に、宇髄さんはそうかよとだけ言って
私達四人に行くぞと背を向ける。


どこに行くのかと問う伊之助に、宇髄さんは
遊郭だと告げた。







準備が必要だと言われ、つれてこられた藤の家紋の家。
任務の内容を聞けば、宇髄さんの三人のお嫁さんが、任務に行ったきり連絡が取れないそうだ。
嫁が三人もいる事に暴言を吐く善逸と、
嫁もう死んでんじゃね?なんていう伊之助の不謹慎すぎる発言に、宇髄さんの一撃が沈む。…ご愁傷様です。


用意してもらった着物に着替え、髪を結ってもらっている間に師範に手紙を書く。
遊郭で、しばらく任務に、つきます…っと。
…そういえば、師範は遊郭とか、行くんだろうか?
綺麗な女性を両脇に座らせ、お酒を飲む師範を想像する。
…なんか、師範遊郭で人気とかありそう。
勝手に想像して、私はため息を吐く。
白粉を塗られ、紅をひかれる。

鏡にうつった自分をみて、なんだ胸の内が小さく傷んだ。

あの日、家族が鬼に殺されなければ…。
自身の豆だらけの両手をみて、そんな事を考えても仕方ないと私は両手を握った。



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