海底の月 | ナノ
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▼ はじまりは大貧民


高校は、草摩の人が誰もいない学校に通った。
慊人は、私が草摩の人と関わるのを嫌ったからだ。
別にそれでいいと思っていた。草摩の人達と関わりたいなんて思ってない。どうでもいい。
それなのに。

自身のことを、僕という事がすっかり定着した高校一年の秋頃、慊人に言われた。
草摩由希と同じ高校に編入するようにと。
お前は見ているだけでいい、由希にはかかわるな、接点を持つな、由希と夾とあの女を監視しろ。

そう僕に伝えた慊人は、ひどく怒っていて、イラついていて。
それ以上を伝えずに閉められた扉を、黙って見つめた。
なにが慊人を傷つけたの。あの女って誰。その女が、慊人を苦しめているの。
許せないと思った。慊人を傷つけるすべてが、悪だと思った。



私の世界は、ひどく狭かった。



編入した海原高校では、慊人が手をまわしたんだろう。草摩由希と草摩夾と同じクラスになった。“あの女”が誰かなんてすぐに分かった。
二人が特別に、大切に、まるで宝物のように扱う女の子。長い髪を風になびかせ微笑む姿は、とても可愛らしく、懐かしいような、不思議な感覚。なんだか、胸の奥が締め付けられた気がした。


慊人の命令通り、草摩由希達ちは関わらないようにしていた。というより、クラスの誰とも会話をしていなかった。必要がなかった。皆も、僕を避けていた。
それなのに
「ミョウジさん!」

それなのに、本田透は僕に笑顔で駆け寄ってくる。

「…なに。」
「大貧民をしませんか?」
「なにを…言っているのかわからない…。」

本当に意味が分からない。そう伝えれば、慌てたようにすみません!トランプをみなさんでしようと思いまして!とわたわたと続けるので、さらに首をかしげる。

「なぜ僕と君がトランプをするの?」
「えっと、ミョウジさん、転入してそろそろ一週間ですが、まだお話をしたことがなく、お話をしてみたくて。」
えへへと笑う彼女に、僕は考えこむ。
慊人には関わるなと言われているが、ここで彼女を拒絶すると今後監視が難しくなるかもしれない…どうしたものか…。
「えっと…ミョウジさん?あ、あの嫌でしたら!嫌でしたら無理にとは…」

考え込んでしまった僕に、本田透が慌てだした、その時
「急ぎの用事でもあんのかー?」
「え?いや、特には…うわ!?」

長いスカートの生徒に、腕をひかれる。
そして、反対側の手を三つ編みの少女につかまれ、その二人にズルズルと引きずられ連行される。

「ちょ…」
「おら用事ねぇなら一戦してけよ。それともなんだ?透のお誘いを受けられねぇってのか?あ?」
「駄目よありさ…まるでヤンキーみたいだわ。」
「どうみてもヤンキーだろうがそいつは。」
「ああん?なんだとこのクソオレンジあたしのどこがヤンキーだゴラァ」
「全部がそうじゃねぇかよ!!!」
「んだとこら上等だこら決着つけようじゃねぇか!」
「望むところだ!!ああ!?」

あれよあれよとトランプが配られ、勝負!!という掛け声で始まる大貧民とやら。
草摩由希はため息を吐きながらも自分の手札をもって参加している。え、なにこれ。


どんどん順番に出していくトランプ。いや、ちょっと、あの


ルールを教えてくれよ!!!!


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