海底の月 | ナノ
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -


▼ 三色おにぎり

それからの学校生活は実にあわただしかった。
急にやる気を出した草摩夾も加わり、屋台がゆがんでるだの凝りだす。
祭り向きだなあの性格は。

「アニマルおにぎり、形は決まったかしら。」
「うわっ急に背後に立つなよ。」
「急じゃないわ。ゆっくりちかづいただけ。」
「それを急っていうんだよ…。ほら。」
「あら可愛らしいわ。絵が上手なのね。」
スゥっと現れる花島の気配のなさに首の毛が逆立ち、首を抑えつつルーズリーフに書いたオニギリ案を差し出す。

「みて透君、オニギリ可愛いわよ。」
「わぁ可愛いです!お上手です!」
「へー!ほんと見かけによらず可愛いのが好きなんだな。」
好き勝手に意見を言うお決まりの三人に「別にうまくないし好きじゃない。」と返し、ついでにもう一枚のルーズリーフを差し出す。

「ほら。」
「へ?」
「三色おにぎり。こういう風ならいいんじゃないの。一応案、出すだけ出してみたら。」
小ぶりの丸いオニギリ三つで作ったネズミの形のオニギリのイラストが描かれた紙。
「へー。これなら三個の具も入れれるし、別で食べたいなら耳もげばいいのか。」
「…言い方。」
「バイオレンスなオニギリね。でも素敵だわ。」
「ありがとうございます!本当に本当に、嬉しいです。感激です。」
嬉しそうに抱える本田透は、何度も僕にお礼を伝え、「草摩君に見せてきますね!」と元気に駆けていった。

「…可愛らしいでしょう、透君。」
「惚れんじゃねーぞオメー。」
その後ろ姿を見つめすぎたせいだ。魚谷と花島にそのような言葉をかけられ、僕は自身に苦笑する。
「可愛いと思うよ。でも」

可愛くて、優しくて、暖かい人。
でもそんなぬるま湯みたいな温度は僕は好きじゃない。
僕が好きなのは、慊人と二人で過ごす、あの和室のひんやりとした温度。

間違えてはいけない、僕の存在理由。

「好きになる事はないよ。絶対にね。」

僕の言葉に、魚谷は怒ると思ったが、黙って見つめてくるだけだった。




prev / next

[ back to top ]