海底の月 | ナノ
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▼ 消えた文字

文化祭がはじまる。
学園はどこも、すこしだけ浮足立っている用だった。

もちろんこのクラスも、例外ではない。
オニギリ亭なる飲食店を出店することになったこのクラスは、本日、どのような経営方針にするかメニューを考案会している。

「はいっ三色おにぎりなんてどうですか!?」

元気に手を挙げた彼女、本田透は、嬉々としてその三食おにぎりの魅力を、


と、ここまでペンを走らせて、消しゴムで消す。
あまり事細かに本田透のことを書くと、慊人はもうこの報告書を読まなくなってしまう。
チラリと視線を上げ、現在進行形で黒板の前にたち、オニギリ亭について出た意見を書き込んでいく草摩由希の報告へと切り替える為、彼と、彼の天敵…草摩夾の様子に意識を集中させる。

【草摩由希は、本日もクラスメイトに頼られ、優等生らしき振る舞いをするも、
草摩夾はどこか血の気が多く、草摩由希との性格の対象差が目立ち。】

しかし、草摩夾もまた、多くの生徒に好かれている様子

「…」

最後の一文も、本田透の報告日誌同様に、消しゴムで消す。
慊人はそんな事、望んでいないように思えたから。

「で?あなたはなにかいいアイディア、ないのかしら。」
「そーだぞー。おめーはなんか意見ねーのかー。」
「え?」
突然言葉を投げかけられ、ハッと顔を上げれば花島がこちらを見つめ、魚谷がこちらに向かって鉄パイプを向けていた。
なんで鉄パイプなんてもってるんだ…。

「さっきからなんか書いてばっかじゃねーか。なんかいいアイディアねーの。絞り出せなんか。」
「鉄パイプを人に向けるなよ…。しかも恐喝だろもはやこれ。」


ふと周りの様子を見れば、クラスメイトが息をのんでこちらを見ていた。
せっかくいままで関わらないよにしてきたのに…魚谷と花島のせいで台無しだ。
はぁ、ため息をつき考える。ここで無視するのも今後がやりづらい。ただ観察するだけでいいのだが、同じ教室で最低でも一年は過ごす以上、変に孤立するのはやりづらい。

「動物型、とかどうだろうか。三角じゃなく、アニマル型。」

『((((意外と可愛い意見だしてきた!!!))))』
「あら混沌とした電波だわ。」
「? もう出したんだからいいだろ。おいなにニヤニヤしてるんだ魚谷!おい!」

「アニマルオニギリ、と。えっと、ほかに何か意見は…」
クラス委員の女子が板書し、ほかの意見を求めれば草摩夾がバトルオニギリだとかいう
血の気マックスなものを提案し、みなに却下される。

当たり前だバーカ。
気づけば自身の口角があがっており、我に返って真顔に戻る。

一連の流れを報告する為、ペンをもつも、やめた。自分でも理由はわからなかった。

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