トウコちゃんがプールに誘ってくれた。トウコちゃんスタイルいいから一緒に行くの恥ずかしいよ〜と言いながらもトウコちゃんのお誘いを断れはしない。トウコちゃんはあんただってスタイルいいじゃないのよ、特に胸とかとジト目で言う。トウコちゃんは胸、気にしてたんだっけ。別にいいと思うけどな。胸で価値決まるわけじゃないと思うんだけど。

 「わー、プールなんて久しぶりだなあ」
本当はいけないのだけど、今の時間帯は監視員さんがいないのをいいことに服を着たまま、少し下見。ぽちゃ、と手をつけてみるとそこそこ冷たい。
「じゃあ、トウコちゃん更衣室に」
振り向こうとした瞬間。誰かに背中を押された。誰かって、あの子しかいないじゃない。
服が体にべたり吸い付く。うわあ気持ち悪い。重くて、体も動かしにくい。通りで着衣水泳はよくないはずだ。
早く酸素を吸いたいのに、いきなり落とされたせいでなかなか顔を出せない。プールには底があるのに、このままぶくぶくとどこまでも沈んでいきそうに思えた。
 ぷはっとやっと顔をだし、酸素を吸う。薄くしか目を開けられない。誰かが、やだ、大丈夫?名前、と手を差し伸べている。……この手をとって、良いものか。酸素不足の私が考えられる筈はなく、迷わず手をとる。目の前の誰かが、にたり笑った。
誰か、なんて君しかいなかったね