「こんにちはー!」
がちゃり、元気よく研究所の扉が開いた。来客の少女、名前は今日から憧れのポケモントレーナーだ。珍しく早起きをしてはや歩きでこの研究所までやってきた。
「こんにちは、オダマキ博士」
「やあ名前ちゃん!いらっしゃい」
研究所の博士、オダマキ博士はにこりと挨拶をすると、まっててねとだけ言い、奥へなにかを取りに行く。名前はそのなにかを把握していた。
「今日からポケモントレーナー、おめでとう」
「ありがとうございます!」
「さて、始めに選ぶ、パートナーとなるポケモンだよ」
オダマキ博士がボールからポケモンをだす。名前は自分のパートナーとなるポケモンはどの子になるのか、胸を踊らせた。最初にもらえるのは草、炎、水タイプから1匹だと名前は聞いていた。草は炎に弱く、水に強い。炎は水に弱く、草に強い。水は草に弱く、炎に強い。このようにタイプ相性が三竦みになる仕様。名前は上手いことなってるなぁと感心した。
「これが、もらえるポケモン…」
名前は机に目をやった。
くりくりした可愛い目でみてくるひよこのようなアチャモ。
人に驚いているのか、首をくてんと傾げているミズゴロウ。
特に興味無さげにしている、クールでスマートなキモリ。3匹の可愛い姿に、名前は迷った。どれを選ぼうか、まったく決まらないのだ。
(アチャモも可愛いけど、ミズゴロウも、いやいやキモリもカッコいい…)
考えても考えてもみんないい。はじめてのポケモンで、こんなに悩むことになるなんて思っていなかった。優柔不断ではないから、すぐ決めれるし、わくわくしたいと思って、ちゃんと事前に決めておかなかったことを名前は少し後悔した。
あまり長く迷っていると博士を困らせてしまうと名前は一生懸命に考えた。
 その時、また研究所の扉が開いた。
「…あれ?新人のトレーナーか?」
「え、あ…はい」
オダマキ博士はああ、ユウキくん!と彼に笑いかけた。どうやら二人は知り合いらしく、ユウキと呼ばれた彼がもし新人トレーナーならはやく決めないと!と名前はますます焦った。
「…迷ってるのか?」
はて、何をだろうと名前は思ったが考えればひとつしかなかった。パートナーとなるポケモンだ。名前はこくり、頷くとユウキはモンスターボールをひとつ空へ投げた。
「…わっ!!」
現れたのは、ミズゴロウとよくよく似たポケモン。恐らくは進化系と呼ばれる、ミズゴロウの将来の姿なのだろうと名前は考えた。
「迷ってるなら、ミズゴロウにしたら?」
「ミズゴロウ、ですか」
じぃ、とミズゴロウを見つめる。ミズゴロウもごろ?と首をかしげて名前を見る。
「成長していくたび、どんどん頼もしくなっていって…すごく頼れるパートナーになってくれたんだ。…ま、どのポケモンもそうだけど、もし迷ってるなら俺はミズゴロウがいいと思うぜ」
ユウキがはにかむ。名前はドキッとしてしまい、照れてしまってうつむいた。そして前を向き、手を差し出した。
「…ミズゴロウ、良かったら私と来てほしいな!」
ミズゴロウは待ってましたと言わんばかりに名前の胸に勢いよく飛び込んだ。ユウキが無言でうなずく。名前はオダマキ博士にお礼をして、研究所をでたユウキを追った。
「あ、あの、ありがとうございました!ミズゴロウと私、頑張ります」
「別に…お礼なんていいけどさ。あ、お前、名前は?」
「えっ、と…名前です」
「ふぅん、名前ね。もう知ってるかもしれないけど俺はユウキっていうんだ。まぁ、トレーナー同士よろしくな」
「あ、よろしくお願いします!」
別に敬語じゃなくても…とユウキが少し笑う。
それから、ユウキと別れて名前は旅の一歩を踏み出す。横にはミズゴロウも一緒だ。
これから向かえる旅に出て初めての夜とユウキに出会って初めての夜に名前は胸を踊らせた。
「…ドキドキして、死んじゃいそう」

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