ヨノワールさん。少女は何故か自分をさん付けで呼んだ。確か、名簿に書いてあった少女の名前は名前、だったか。
「どうしてヨノワールさんが私のところに?」
きた。このヨノワールというポケモンに産まれて、辛い部分だったりするのだ。これが。若い人でも年老いた人でも、やはり人にあなたは死ぬからお迎えですと言うことに慣れない。それに今回はまだ10代の少女。今からたくさん冒険をする年代なのに、なぜこの子がと考えてしまった。
「あ、お迎え?」
こくんと頷いた。ふーん、そっかぁと彼女は特に驚きも、悲しむ様子も見せず笑った。
「…悲しくないのですか」
「だってね、ヨノワールさん。人間は、生き物は産まれたと同時に死を約束されるようなものなんだよ。それは当たり前だから仕方ないんだよ、ヨノワールさん。みんないつかは死ぬんだよ。それが、私の場合はこの時期ってこと。それに対して私はなにも言わないし、運命みたいなものなんだよ」
ポケモンが完全に死ぬのは少ないみたいだけど、と少女は笑った。理屈で分かっていても、悲しくないのか。どうして目の前の、あどけない少女は死ぬと言われて笑えるのか。私には分からなかった。
「…そろそろ」
「逝きますか。よろしく、ヨノワールさん」
これから死ぬのによろしくなんて変ですよと思いながら、少女の手を引いた。