名前はいつも自分の気持ちを溜め込む人だ。一概に悪いとは言えないけど良いことではないであろうそれは、名前の心臓をいっぱいいっぱいに侵しているんだろう。いつか溜め込みすぎて心臓が爆発して、名前の全部が溢れるんじゃないか。名前には悪いけど、期待していたりもする。彼女の汚い部分をみてみたい。普段綺麗な彼女の汚い部分を見たら、きっと罪を犯してしまったかのような気持ちになるんだ。そう考えるとぐつぐつ煮えるように心臓が熱くなった。最初に心臓が爆発するのは、僕の方かもしれない。

 僕は名前に好きだ、付き合ってくれないかと言った。名前はびっくりしたあと困ったように目を伏せて、静かに頷いた。あ、また名前の心臓にひとつ、溜め込まれた。

 次に僕はデートに誘った。名前はやっぱり困ったように目を伏せた。何故ならその日、名前は自分のポケモンと散歩に行くつもりだったからだ。知っていて誘った。少し迷って、わかったと言った。またひとつ、彼女の心臓は破裂へ近付いた。

 次に僕はキスを求めた。名前は少し戸惑っていたが、いいよと言った。桜色の唇が震えていたけど、くっつけた。名前の唇は柔らかい。

 名前は突然、僕に別れてほしいと言った。僕はまさか別れ話を持ち込まれるとは思ってなくて、やり直したいと言おうと思った、が、やめた。心臓に閉まっておこう。仕方なく、わかったとだけ言った。最後に名前は、チェレンくんはなにがしたかったのと聞いた。あ、れ、僕、何がしたかったんだっけ?