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「初めまして、今日からお手伝いをさせていただきます。名前です。お願いします」
ぺこりと頭を下げた彼女は今日から新しくナナカマド博士の研究所にはいった助手だ。多分僕と同年代。どうやら周りの環境と進化の関連について研究をしているらしい。名前さんはこのへんの人じゃないのか、かなり厚着をしていた。気になったので挨拶もかねてあとで話しかけよう。
「あの、名前さん」
「あ、はい!」
ぱっと驚いたように名前さんが顔をあげる。なにかご用ですか?と僕にたずねる。
「あ、えーっと、僕はコウキ。よろしくね」
「コウキ、さん!よろしくお願いします」
にっこり笑って僕の名前をよぶ。可愛い声だなと思った。やっぱり僕と同い年で、呼び捨てでいいよと言ってもいえいえと言う。かなり真面目な人みたいだ。でもこういう人の方が研究者に向いてるんだろうな。
「あ、気になってたんだけど、名前さんって何処出身?」
「私はホウエンから…。分かりますかね」
「分かるよ。あっちはあったかいらしいね」
「はい。だからシンオウの寒さにはびっくりしちゃいました。それに雪もはじめてみます」
それにはこちらが驚いた。シンオウて毎年あたりまえのように降ってあたりまえのように積もる雪を名前さんは知らない。
「そんなにあたたかいんですか?」
「住んでたときは分かりませんでしたけど…シンオウにきて、ホウエンはすごくあたたかいんだなって分かりました」
えへへと名前さんが笑う。同じ世界にすんでてもシンオウのあたりまえを共有しているのはとても少ないのだと思う。じゃあもしかしたら他の地方はもう少しあたたかいのかな。
「よかった」
「え?」
唐突に名前さんが言い出した言葉に思わず聞き返してしまう。
「こっちでうまくやれるかなぁって、不安だったから…ありがとうございます」
そっか、やっぱり名前さんは年相応の女の子だ。しっかりしてるように見えたってきっとすごく不安だったんだろう。今まで住んでいた土地を離れるわけなんだから。
「コウキさんがいて、良かった」
僕も名前さんと出会えて良かったよっていったらどんな顔をするんだろう。少し意地悪を考えてしまった。