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昔々あるところにとても優しいメデューサがいました。そのメデューサはメデューサの女性と人間の男性のあいだに産まれた子供でした。彼女は周りから蔑んだ冷たい目でみられ、誰にも仲良くしてもらえることはありませんでした。なんでかと女の子がお母さんに聞けば、目を合わせると石になってしまうから。という嘘みたいな本当の話でした。
女の子がある朝起きると、お母さんは「しばらく、パパは帰ってこれないの」と赤い目で言いました。女の子は少し寂しく思いつつも、お母さんを心配させないようにうんと答えました。
いくらたってもお父さんは帰ってきませんでした。女の子は小さいながらもきっとお父さんはもう帰ってこないのだろうと思いました。それでも、大好きなお母さんがいるならいいと。
しかしあっけなく、女の子はひとりぼっちになりました。メデューサを珍しがった人間がその女の子を捕獲しようとしたのです。お母さんは大事な、大好きな、女の子を守るため、命を捨てました。人間はかちこちの石になりました。結果、女の子は守られました。しかし、女の子にはこれ以上ないくらいの孤独の毎日が与えられました。
「…マリーちゃん?どうしたの」
「あ…ごめん。名前ちゃん!なんだっけ?」
「いや、いいけど…何かあった?」
「……思い出して、ひとりぼっちだった時のこと」
ぽつり、悲しそうに女の子が呟きました。
「確かにマリーちゃんは昔、ひとりぼっちだったよ」
彼女はでもねと優しく頭をぽん、とたたき、メデューサと目を合わせました。
「今は違うでしょ?私はずっとずーっとマリーちゃんのそばにいるんだからね」
世界一幸せなメデューサの話