小説 | ナノ
一松の不安のみここから名前変換お願いします
忘れ物を取りに行くため放課後の静まり返った校舎を歩く。と、ようやく着いた教室の中で誰かが泣いていた。声からして女のようだ。一瞬入るのが躊躇われたが、ここで帰るわけにも、まして女が泣き止むのを待つわけにもいかず、かけていた手に再び力を込めて扉を開けた。
その音で女は顔をあげた。
そしてその泣き顔を見た瞬間、僕の心臓はぐしゃりと握り潰された。
「…………あ、ご、ごめんね」
数分、数時間、もしくは数秒後、女が慌てて涙を拭った。それを見て、何かを思うより先に、俺は足早に女の前に行き、その手を掴んでいた。
涙が扇情的に瞳を揺らし、大きな目から零れ、赤くなった頬を伝って落ちる。兄弟とも親とも憧れのあの子とも大差はないはずの、女の泣き顔に強く惹かれた。
ずっとずっと飽くこと無く見ていられる。のに、女は泣くことを止めて、ぱちくりとこちらを見ていた。
「……泣けば」
もっと見たい。その思いで言えば、女は驚いたように数度瞬きをし、それから目に涙を溜めた。
「泣いていいの……?」
返事を待たずして、女はまた涙を流し始めた。俺は掴んだ女の手首が赤くなるのにも気づかないほど興奮していた。