高遠 | ナノ
「うぅう……,ッハ!」
ガバッと勢いよく起き上がると,そこは自室のベッドの上だった。樹海で赤尾先生に追いかけられる夢を見た……。
私は夢だったことに安堵のため息をついて,携帯で時刻を確認する。ちょうどいい時間だ。寝坊しないように高遠さんが起こしてくれたのかもしれない。(それはないな。)
「……よし,準備しよっと」
朝一の集合場所である東階段前に行こうと教材と筆箱を持って部屋を出ると,ちょうど中屋敷君と会った。
「おはよう,野々葉!」
「おはよう,中屋敷君」
「ついでだし,一緒に行こうぜ」
「うん!」
と言って二人で歩き始めたのだが,私はある部屋の前で足を止めた。
「ん?金田一か?」
「すっごい静かじゃない?起きてるのかな?」
「起きてねえかもなあ……」
「遅刻したら可哀想だし,ちょっと起こしてくるよ。悪いんだけど,先に行ってて」
「お,おう。野々葉まで遅れねえようにな!」
「うん,ありがとう!」
私は中屋敷君に手を振って,金田一君の部屋のドアを開けた。中に入って確認すると,金田一君は案の定寝ていた。
「金田一く……」
言いかけて,私はにやりと笑った。いいこと思い付いた。
「はじめちゃん,起きて!」
「みっ,美雪〜!」
美雪ちゃんの真似をしてみると,金田一君は簡単に起きてくれた。のだが,勢いそののまま,金田一君は私に抱きついてきたのだ。
「んなっ!?」
「な,ない!?」
パッと目を開いた金田一君が放ったその一言に
「あるわよ!」
とドスの聞いた声で叫び,私は全力で往復ビンタをお見舞いした。
うわ〜ん!と泣きながら部屋を飛び出すと,赤尾先生と出くわしてしまって
「うわああ……」
と尻餅をつきかけたがなんとか踏ん張って東階段前まで走りきった。
左目×