ぼこ、ぼこぼこ、と土が盛り上がっていた。あそこはたしか、求導師様を埋めた場所だ。死んでいなかった……? いずれにせよ逃げなければいけない。それなのに、体は震えるばかりでいうことをきいてくれやしない。私が怯えている間に土からついに手が出てきて、頭が出てきた。眉間には、たしかに穴が空いている。なんで動いてるの……!? 死体が動くなんて、そんなの……。そう考えている内に求導師様は穴からはい上がってきた。虚ろな目でにたにたとしている。そして宮田さんの物と思われる白衣を着ていた。
ずるずると足を引きずりながら、一歩、一歩とこちらに近づいてくる。見つめる先には……。私がはっとして振り返ると、宮田さんは息を荒くし、求導師様を怯えた瞳で見つめていた。このままじゃ、宮田さんが……。そんなの、
「駄目。駄目、駄目、駄目、駄目。駄目!」
私はとっさに宮田さんを抱きしめた。
「死に損ないなんかに殺させない!」
そう叫んだ次の瞬間。求導師様の体がぐちゃりと歪んだ。刹那、彼の体が異形のものへと変わる。
私は、反射的に宮田さんを森の外へ突き飛ばした。
「みっ」
宮田さん。名前を呼びたいのに、声がでない。目の前が真っ暗だ。ああ、私、――食べられちゃったんだ。
いま、ようやく気がついた。私たちは――異界に迷い込んでしまったのだと。
宮田さん、宮田さん。ずっと好きでした。ずっと、ずっとずっと。これからも大好きです。いまさら遅いよね。伝えたかったな。……これ、罰なのかな。宮田さんも、罰を受けるのかな。もしそうなら、神様、お願いです。罰はすべて私が受けます。だから、彼を許してあげてください。私はどうなっても構いません。たとえ異界を永遠にさ迷うことになったとしても。彼が幸せになれるなら、私は構いません。
きりとやえれんぞ、きりとやえれんぞ、きりとやえれんぞ
121116 完
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