宮田さんがこの中にいるとは思えなかったが、須田くんと依子ちゃんと共に屍人の巣を目指し進んだ。その間ずっと「違法建築」という言葉が頭から離れなかった。
須田くんは先陣を切って歩いてくれた。依子ちゃんはマンホールの中で活躍した。そんなふたりの足手まといにならないように、私は遭遇した屍人を率先して倒した。
そして屍人の巣に到着した。だが、――遅かった。堕辰子は既に復活していた。
私はその場に膝をついて頭を抱えた。そこで、私の意識は途絶えた。
「私は、また……」
目を覚ますと、私は赤い水溜まりに足を浸けて仰向けに倒れていた。上体を起こすと、竹内先生、須田くん、そして牧野さんがいた。
「あまり嬉しくない目覚めだな」
「ここは……?」
「八尾さんが、どうして」
竹内先生と須田くんは起き上がるが、牧野さんは起き上がる気配も見せない。私は溜め息を吐いた。
「この水に長居してもいいことはないな。出よう。やつらに見つからない内に」
そう言って竹内先生は水から出て立ち上がった。私と須田くんもそれに続く。
「あの女。あいつがすべての始まりだ。このまま取り返しがつかなくなる」
須田くんが牧野さんを立たせようとするが、牧野さんはまたその場に座り込んでしまった。その間に竹内先生はどこかを蹴破り穴を開けたようだった。
「なんとかなりそうだな」
「これ、あなたのじゃないんですか」
「そうだな。もう私には必要のないものだ」
そう言って、竹内先生はこの空間から脱出してしまった。
「なまえさんも……行こう」
私を振り返った須田くんが遠慮がちに言った。
「……ごめん」
私が首を横に振ると、須田くんは心配そうな表情で脱出していった。
「牧野さん……」
私は牧野さんの前に座り、彼の冷たい手を握った。
「まだ、すべてが終わったわけじゃない……。牧野さんには、牧野さんがすべきことが、あるでしょう?」
手に少しだけ力を込め、なるべく優しく、諭すようにそう言った。
「放っておいてください……」
しかし、牧野さんは力ない声でそう言って、手を振り払った。
「なんで……」
なんで、どうして……。
「お前がそんなだから、宮田さんは……」
気が付けば私は牧野さんの胸ぐらを掴み、低く唸るように言葉を吐いていた。
「返してよ! 私の宮田さん返して……!」
まるでその言葉しか知らないように、返せ返せと繰り返した。唇が動く度に手に力がこもる。牧野さんが苦しそうに呻く声もいまの私には聞こえなかった。
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