「あの、宮田さ」
「なまえさん、それは」
状況を聞こうとして、遮られた。宮田さんは明らかに狼狽していて、私の持っているナースシューズを指差している。
「さっき、偶然見つけて……。どうしたんですか?」
「……いや。それより、ここは危険だ。病院へ向かおう」
「え!? 待ってください」
さっさと歩き出した宮田さんは、階段を通りすぎ、奥の草むらの前で止まった。私も彼を追い、草むらの前で立ち止まる。
「あの、危険って……? 私、気が付いたらここにいて、だから……」
「今、村に異変が起こっている」
「異変? って、何しているんですか!?」
彼は言いながら、石碑を足で倒した。そしてしゃがみこんで何かをした後、立ち上がりまた歩き出した。
「えっと、宮田さん?」
後をついて行きながら彼を呼ぶと、橋を渡りきったところで彼は突然、白衣のポケットからラチェットスパナを取りだし構えた。
「異変というのは、」
そしてこちらに背を向けていたおじさんを、――殴った。
「宮田さん!?」
「こういう事だ」
呻き声をあげながら倒れるおじさん。宮田さんは驚くほど冷酷な目をしていて、私は思わず後退りした。そして、おじさんがなんの前触れもなく動き、土下座のような姿勢をした事で、私はしりもちをついた。
「あ、ぁ……」
「わかったか?」
「はい……」
差し伸べられた手を取り立ち上がりながら、私は頷いた。つまり、化け物が村中にいるということなんだ。どこかで身を守るものを手に入れなきゃ……。
「は、早く行きましょう。復活する前に」
一分一秒でもこの場にいたくなくて、私は宮田さんの手を握り駆け出した。
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