「どうして……」
目を覚ますと、私はさきほどの木の陰に倒れていた。急いで八尾さんの死体を見に行ったが、そんなものはどこにもなかった。血の跡さえ見られない。
屍人になった? それなら血の跡は?
「夢でも見ていたっていうの……」
あり得ない。だって私は人の頭蓋骨が割れる感覚を覚えている。鉄パイプにだって血が……。
――心臓が止まったような気がした。どうして血がついていないの。どうして落としたはずの鉄パイプを持っているの。わからない、わからない、わからない。
「……なんて、言ってる場合じゃない、よね」
八尾さんを、探さなければ。ここから少し歩いたところに教会があるはずだ。八尾さんがいる可能性は、十分にある。行ってみよう。……そういえば、この時間帯、教会付近には知子ちゃんと彼女のお父さん、お母さんがいるはずだ。注意しなければ。
→