「見つけた……」
辺りが明るくなったころ、私はようやく刈割で八尾さんを見つけた。木の陰に隠れ、様子をうかがう。八尾さんが背後を向けているいまなら、簡単に倒すことができるだろう。……でも、本当に倒せるだろうか。倒せたとして、罪の意識を感じてしまったら。その重みに耐えきれなくなったら。
私の手は、震えていた。それを誤魔化すように鉄パイプを強く握る。すべて、終わったあとで考えればいい。いま、私がすべきこと。
「それは」
最後に深呼吸をして、私は走った。
「あぁあああぁああ!」
八尾さんが振り返るよりも早く、鉄パイプを振り上げ頭に叩きつけた。何度も何度も、必死に殴った。地面に倒れても、頭の中身が飛び散っても、狂ったようにただひたすら殴り続けた。
「ハァ……ハァ……」
汗で手が滑って、鉄パイプが落ちた。肩で息をしながら、その場に膝をつく。辺りは真っ赤だった。この場から一刻も早く離れたいのに、足が、体が、動かない。それどころか、力が抜けて――。私はその場で意識を失った。
140528
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