私はそう決意し目を開いた。そしてベッドの下に無造作に投げられていた鉄パイプを取り出し、立ち上がる。それとほぼ同時に、いつのまにか閉まっていた扉が開く。
「恩田美奈……」
部屋の入り口には彼女が立っていた。私がわかっているのか、私に向かって手を広げてくる彼女はただひたすらに不気味で――悲しかった。
以前私が病院に入院したとき、彼女が私の世話をしてくれた。落ち込む私を毎日励ましてくれて、どんなときでも笑顔で……。私はいつからか、彼女に憧れていた。私も彼女のような人になりたいと、心からそう思っていた。――私が宮田さんを好きになるまでは。
私は、表面上はそれまで通り彼女と接した。しかし心の内では憎み、妬んでいた。最低だということはわかっていた。だから必死に彼を忘れようとした。だが、村が異界に取り込まれたいま。私は、諦めないと決めた。だから
「ごめんなさい」
私は鉄パイプを振り上げ、彼女に叩きつけた。何度か殴ると彼女は悲痛な叫び声をあげ、その場にうずくまった。
「美奈さん……。また、お話ししましょうね」
ふと、彼女の笑顔が頭をよぎった。
「それとこれ、お返しします」
そっとナースシューズを彼女の傍に置くと、私は滲む涙を誤魔化すように、足早に部屋を出た。
120416
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