長編 | ナノ


 そっと目を開けると辺りは真っ暗で、私は岸辺に打ち上げられていた。

「ここ……蛇ノ首谷の橋の下? 私、なんでこんなところに……?」

 思い出そうとしても頭が酷く痛むだけで、何も思い出せない。何か、とても大切なことを忘れているような、そんな気がするのに。……とりあえず、家へ帰ろう。
 そう思い川から這い出ると同時に、上の方から公衆電話の音が聞こえてきた。驚いてその方を向くが、橋が邪魔で何も見えない。私は階段を上ろうと歩を進める。その途中で、草むらに何か白いものが見えた。近付き拾いあげると、それはナースシューズだった。

「どうしてこんなものがここに……」

 うまく隠されていて、見つけられたのは本当に偶然だった。誰が何の目的でここに隠したんだ? 顔をしかめ考えていると、突然、目の前が明るくなった。眩しさに目を開けていられなくなり、咄嗟に目を閉じる。すると、よく知った声に名前を呼ばれた。

「なまえさん?」

「み、宮田さん?」

眩しさの正体は彼の懐中電灯だったようだ。他のところに向けてくれたおかけで前を見れるようになったが、まだ視界がチカチカする。



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